過労運転の違反点数は即免許取消し!ドライバーや事業者が注意すべきポイント
- 物流
「過労運転ってどういうこと?」
「過労運転ではどんな検挙事例がある?」
「過労運転が発覚した場合にはどんな罰則があるの?」
このように、運送関係の仕事をしている人の中には、過労運転について知りたいと考えている人もいるのではないでしょうか。
この記事では、過労運転の概要や危険運転との関係、過労運転の検挙事例などを解説しています。この記事を読むことで、過労運転について理解を深めることができるでしょう。
また、過労運転の違反点数と罰則、過労運転を防ぐためのドライバーの注意ポイントについても解説するため、これからドライバーとして仕事を始めるという人も参考にできます。
過労運転について知りたい人は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
過労運転とは
ドライバーとしてトラックなどの運転を行う場合、安全な運転ができないときには運転をしてはいけません。しかし、このような過労運転と呼ばれる状態での運転が原因と思われる事故が起きてしまうことがあります。
過労運転はドライバーだけでなく、ドライバーを雇用している運送会社も責任が問われます。ここでは過労運転について解説していくため、参考にしてみてください。
過労運転とはどういう状態?
過労運転とは、過労や病気、薬物、その他の原因によって正常な運転できない状態です。道路交通法の第66条第1項では、「過労運転等の禁止」という項目があります。
そのため、過労運転を行った場合は法令違反となり、罰則が科されることになります。
出典:道路交通法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105#633
過労運転と居眠り運転は違う
居眠り運転による事故は、道路交通法70条の「安全運転義務違反」に問われます。しかし道路交通法上は、居眠り運転に関する直接の規定はありません。そのため、過労運転と居眠り運転は別のものとなります。
出典:道路交通法|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105#633
危険運転との関係
前述のとおり、居眠り運転の場合は安全運転義務違反に問われます。しかし過労運転により事故を起こした場合、安全運転義務違反よりも重い「自動車運転死傷処罰法」の危険運転とみなされてしまう恐れがあるでしょう。
出典:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律|e-Gov法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000086_20200702_502AC0000000047
過労運転の検挙事例
実際に、過労運転が原因と思われる事故が検挙された事例もあります。過労運転を行わないようにするためには、どのような検挙事例があるのか知っておくことも大切です。
ここでは過労運転の検挙事例を紹介していきます。
運転手と運転管理者が逮捕された事例
危険運転によって、運転手と運転管理者が逮捕された事例があります。2016年3月、広島県東広島市の山陽自動車道下り「八本松トンネル」の渋滞で停止中の車列にトラックが突っ込む事故が起こりました。
この事故で、運転手は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)などの罪に問われ、雇用主である運行責任者も道交法違反(過労運転下命)で逮捕、起訴されています。
過労運転指示容疑で検挙された事例
事故にならなくても、過労運転指示容疑で検挙された事例があります。2016年2月、兵庫県の高速道路でバイパスの車線からはみ出す形で駐停車しているトラックがあり、中で仮眠を取っていた運転手が警察の調べを受けたことで、過労運転が発覚しました。
この事例では、運転手だけでなく、過労運転の恐れがあると知りながら運転手に運送を指示した運行管理者を務める社長も書類送検されました。
過労運転の違反点数と罰則
過労運転などの違反行為を行った場合、罰則が科されることになります。しかし安全運転義務違反と過労運転では、罰則の内容にも大きな違いがあります。
ここでは過労運転の違反点数と罰則を紹介していきます。
過労運転等の点数は25点
交通違反の違反点数としては、過労運転等は25点となっています。たとえば、居眠り運転が安全運転義務違反だと判断されれば違反点数は2点ですが、過労運転と判断された場合は25点もの大きな違反点数になってしまいます。
出典:交通違反の点数一覧表|警視庁
参照:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/torishimari/gyosei/seido/tensu.html
過労運転等の行政処分は一発免許取消し
交通違反での行政処分は、点数や回数などによって決まります。たとえば、行政処分の前歴が2回で違反点数が2点の場合、行政処分としては90日間の免許停止処分となります。
しかし過労運転の場合の違反点数は25点です。そのため、たとえ事故を起こしていなくても、一発で2年間の免許取り消し処分となります。
出典:行政処分基準点数|警視庁
参照:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/torishimari/gyosei/seido/gyosei20.html
過労運転等の刑罰(刑事処分)
過労運転を行った場合、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科されます。また、麻薬や覚せい剤などの影響によって正常な運転ができない恐れのある状態で運転を行った場合、5年以下の懲役、または100万円以下の罰金となります。
出典:道路交通法|e-Gov 法令検索
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105#633
過労運転を防ぐためのドライバーの注意ポイント
過労状態では運転手が正常に判断できないため、運転をすることで大きな事故に繋がる可能性があります。そのため、車の運転を行う場合は過労運転にならないように十分気をつける必要があると言えるでしょう。
ここでは過労運転を防ぐためのドライバーの注意ポイントを紹介していきます。
- 最低6時間から7時間継続した睡眠をとる
- 過度な長時間運転は避け運転後8時間以上は休む
- 心身に不安があったら運転しない
- ストレスをためない
- 寝酒や深酒を慎む
- 体調や気分の悪いときは運転しない
- 眠気を催す薬を飲んだ後は運転しない
最低6時間から7時間継続した睡眠をとる
過労運転には明確な基準はありませんが、睡眠不足による集中力の低下や眠気などは過労運転の原因になります。そのため、車を運転する場合は最低でも6時間から7時間の継続した睡眠をとるようにしましょう。
継続した十分な睡眠をとることで、睡眠の質の高めることが大切です。
過度な長時間運転は避け運転後8時間以上は休む
疲れによる集中力の低下は過労運転の原因になり得ます。睡眠不足ももちろん危険ですが、運転の連続でも心身の疲れは溜まりやすいです。
そのため、過度な長時間運転は避けるようにして、運転をした後は8時間以上の休息をとるようにしましょう。
心身に不安があったら運転しない
過労運転は、単純に十分な休息をとっておけば大丈夫というわけではありません。心身が過労状態になっていることにより、事故に繋がる可能性もあります。
そのため、心身に何かしらの不安があれば、運転は控えるようにしましょう。
ストレスをためない
車を運転する場合、ストレスをためこまないようにしましょう。過労運転は心理的ストレスが原因になることもあるため、日頃からストレスをためないようにすることも大切です。
ストレスがたまっていると感じる場合は、適度な気分転換を行ってストレスを発散するようにしましょう。
寝酒や深酒を慎む
過労運転による事故を防ぐためには、過度な飲酒を控えることも大切です。日常的に飲酒を行っている場合は、寝酒や深酒などは慎むことが大切です。
特に車の運転を行う前日は、深酒をしないように気をつけましょう。
体調や気分の悪いときは運転しない
体調が悪い時には車の運転をしないことも、過労運転を防ぐために重要なポイントです。また、気持ちが不安定になっているときの運転も危険です。
日頃から自分の体調管理をしっかりと行い、体調や気分が優れない場合は運転を行わないようにしましょう。
眠気を催す薬を飲んだ後は運転しない
眠気を催すような薬を飲んだ後は、車の運転を行わないようにしましょう。眠気がある状態での運転は非常に危険です。
たとえば、花粉症の薬として多い抗ヒスタミン剤などは眠気を誘発します。そのため、このような薬を飲んだ場合は、車の運転は行わないようにしましょう。
過労運転を防ぐために事業者が確認・見直しを行うポイント
紹介したとおり、道路交通法によって過労運転は運転した運転手だけでなく、運転を指示した事業者や運行管理者も責任を問われます。過労運転によって罰則に科された場合、会社としてのイメージダウンは避けられないでしょう。
そのため、運送会社として事業を行うのであれば、過労運転を発生させないための取り組みが必要になります。ここでは過労運転を防ぐために事業者が確認や見直しを行うポイントを紹介していくため、参考にしてみてください。
- 運転手に過度な負担をかけない勤務体制・運行体制の整備
- 運転手の疲労や睡眠状態をチェックする始業前点呼の励行
- 過労運転防止の社内チェックの整備
- 運転手の疲労度や睡眠度の測定機器導入などによる運転手の健康管理
- 体調の悪いドライバーが休むことができる社内風土の確立
運転手に過度な負担をかけない勤務体制・運行体制の整備
運送業の事業者としては、運転手に過度な負担をかけないための体制作りを行うことが大切です。近年では運送業への参入障壁が下がっていることもあり、利益を増やすために事業者が無理な運転を命じるケースもあります。
そのため、そのようなことにならないように運行体制や勤務体制を整えるようにしましょう。
運転手の疲労や睡眠状態をチェックする始業前点呼の励行
過労運転は睡眠不足や睡眠の質の低下などによって発生するケースも多いです。そのため、始業前に点呼を行い、運転手の疲労状態や睡眠状態を確認するような体制を整えることも大切です。
また、始業前の点呼によって問題があった場合、その運転手には運転をさせないようにすることが重要です。
過労運転防止の社内チェックの整備
過労運転を発生させないように、社内でも過労運転防止のためのチェック体制を整備するようにしましょう。チェック体制を整えることにより、過労運転に繋がるリスクの高い運転手を休ませることも可能になります。
運転手の疲労度や睡眠度の測定機器導入などによる運転手の健康管理
運転手の疲労状態を客観的にチェックすることも効果的です。そのため、運行中の運転手の疲労度や睡眠度などを測る計測機器を導入するのも良いでしょう。
機器を使って運転手の健康管理を徹底することで、会社の指示によって披露の蓄積している運転手を休ませることも可能になります。
体調の悪いドライバーが休むことができる社内風土の確立
運送業界は人材不足ということもあり、体調が悪くてもなかなか仕事を休めないドライバーも多いです。そのため、会社として体調が悪い場合は仕事を休むことができる社内風土を作り上げることも重要です。
このような社内風土が確立できれば、体調が悪いにもかかわらず無理をして運転し、過労運転に繋がるリスクを軽減することができるでしょう。
運転手も事業主も協力して過労運転をなくそう
運送業界では、過労運転が原因と思われる事故が発生することも多いです。また、過労運転だと判断されれば、ドライバーだけでなく運転を命じた事業者も処罰の対象となります。
この記事で紹介した過労運転の概要や過労運転の検挙事例、過労運転を防ぐためのドライバーの注意ポイントや事業者が確認や見直しを行うポイントなどを参考に、運転手と事業者双方が協力して過労運転防止に努めるようにしましょう。