軽貨物運送業を開業するメリットと手続きの流れは?必要な条件・書類・費用も解説
- 物流
近年、ネット通販の需要が増す中で、宅配を担う軽貨物運送業に注目が集まっています。そんな中で、今から軽貨物運送業をはじめてみようと思いながら、躊躇している人もいるでしょう。
本記事では、軽貨物運送業を開業するために必要な届け出や手続きはじめ、軽貨物車両に関わる運行上の費用や各種保険に至るまで、気になる情報を網羅しながら軽貨物運送業のメリットについても詳しく解説していきます。
本記事を読み終えた頃には、軽貨物運送業への理解と知識がさらに深まり、躊躇していた気持ちにも前向きな変化を与えることでしょう。
高まる通販や宅配需要に応えるべく、軽貨物運送開業に向けてさらなる一歩を踏み出しましょう。
軽貨物運送業を開業するために必要な準備と手続きの流れ
軽貨物運送業を開業するには、色々と準備や手続きが必要になります。ここでは、車庫や車両の確保から保険手続きまで、軽貨物運送事業者として実際に仕事をはじめるまでの流れのいくつかを紹介していきます。
起業については、その1つずつに上手く対応することで意外簡単に申請まで漕ぎ着ける可能性があるでしょう。
1:車庫(駐車場)を確保する
車庫(駐車場)は、基本的に営業所や休憩・睡眠施設に併設するか、営業所からの距離が2km以内に、使用する車両の全てが収容されるといったことが条件となっています。
この場合の営業所や休憩・睡眠施設とは自宅であっても可能で、車両は1台からでも良いとされています。
駐車スペースについては、基本的に8㎡のスペースを確保しておきましょう。
出典:軽貨物運送業を開業したい人へ【要件のご案内】|木村行政書士事務所
参照:https://kimura-gyouseishosi.com/car/kei/keikamotsu_requirements/
2:軽貨物車両を用意する
軽貨物運送業では取り扱う荷物は比較的小さなものが多いため、用意する軽貨物車両は主に軽トラックや軽バン、125cc以上のバイクが多いようです。
使用車両の条件としては、車検証に車の用途として「貨物」になっていることが必要で、所有に関しては本人以外にリース車でも可能な上、1台以上あれば良いとされています。
出典:軽貨物運送会社の設立|行政書士法人シグマ
参考:https://sigma-office.jp/kei-kamotsu-kaisha/
3:任意保険・貨物保険に入る
任意保険と貨物保険への加入は、強制加入の自賠責保険と併せて開業前には済ませておきましょう。
車両の運営時には人身に関わる対物賠償保険をはじめ、車両や物品への損傷に対する対物賠償保険や運転中の車両に関わる車両保険など、万が一の事故に対して備える必要があります。
加えて、運送中の荷物を損傷した場合などへの備えとしての「貨物保険」は、運送業特有の保険として推奨されているので加入しておくと良いでしょう。
4:軽貨物運送事業者として登録し黒ナンバーを取得する
軽貨物運送業者として事業をはじめることは、すなわち黒ナンバーで営業をはじめることであり、そのためには運輸支局が定める「貨物軽自動車運送事業」の経営届出書が必要です。
書類には事業代表者の氏名・住所をはじめ、営業所の名称・位置や事業用車両の数など、運送約款に関わる情報を記入します。
出典:【見逃しNG】クロナンバー登録・取得方法(軽貨物運送)のここが知りたい|行政書士法人シフトアップ
参照:https://xn--jprz31c82x93etka.com/kei
5:個人事業主は税務署に開業届を提出する
個人事業主として軽貨物運送業をはじめるには、税務署への開業届の提出が必要です。提出は開業日から1ヶ月以内に所轄の税務署に出しましょう。
開業届けの書類は最寄りの税務署でも入手できますが、国税庁のホームページからでも無料でダウンロードが可能です。
出典:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
6:仕事をはじめる
必要な手続きが済んだら、いよいよ軽貨物運送事業者としての仕事のスタートです。
仕事をはじめるに当たって注意すべきことは、自ら運送依頼主に営業するよりも、運送の仕事を斡旋してくれる会社を探すのが近道といえるでしょう。
黒ナンバーを取得するための必要書類
黒ナンバーとは、黒字のベースに黄色の文字で書かれたナンバープレートのことで、「貨物軽自動車運送事業」の車両に対して取り付けることが義務付けられています。
ここからは、黒ナンバーを取得するに当たって運輸支局に提出が必要な書類について詳しく解説します。
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書
- 事業用自動車等連絡書
- 運賃料金表
- 車検証
貨物軽自動車運送事業経営届出書
貨物軽自動車運送事業経営届出書は軽貨物運送業をはじめるための書類で、提出用と控え用の2部が必要です。届け出用紙は運輸支局でも入手できますが、運輸局のホームページからでもダウンロードできるため、いずれかの様式を使いましょう。
貨物軽自動車運送事業経営届出書には営業所・休憩施設の要件や車庫、車検証についての要件など、満たすべき項目が設けられています。
出典:貨物軽自動車運送事業経営変更等届出書作成の手引き|九州運輸局 自動車交通部 貨物課
参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/kyushu/content/000233765.pdf
事業用自動車等連絡書
事業用自動車等連絡書は、貨物自動車の使用者(運送事業者)が運輸支局における申請を完了したことを証明するものです。
この書類は使用する車の車両番号や型式などの詳細を記入するため、作成の際には車検証を用意しましょう。
この連絡書を運輸局に提出すると、運輸局から(運輸局のスタンプ押印分)の連絡書が即日で帰って来ることになっています。
出典:連絡書の書き方|行政書士 堀内法務事務所
参考:http://gyosei-horiuchi.com/2020/04/06/%E9%80%A3%E7%B5%A1%E6%9B%B8%E3%81%AE%E6%9B%B8%E3%81%8D%E6%96%B9/
運賃料金表
運賃料金表とは「貨物軽自動車運送事業運賃料金表」のことです。
軽貨物のドライバーとして実際に仕事を請け負う場合は、荷物主に対して運賃を提示しなければなりません。このため、運賃料金表には荷物主に対して必要な提示事項が記されています。
書式については自由でありながらも、書類のフォーマットは運輸支局にあり、提出用と控え用の2部が必要です。
出典:【最新版】運賃料金設定(変更)届出の書き方を詳細に解説|やまだ行政書士事務所
参照:https://ymd-unsou.com/todoke-kakikata
車検証
黒ナンバーを取得するには、事業用車両の車検証の提出が必要です。さらに、車両が新車の場合には、事業で使う車両の車体番号を記した書面があれば良いことになっています。いずれも提出はコピーでも可能です。
出典:貨物軽自動車運送事業を開業する際の手続き完全ガイド|やまだ行政書士事務所
参照:https://ymd-unsou.com/keikamotu-kaigyou
軽貨物運送の開業に必要な条件
軽貨物運送を開業するということは、個人事業主として個人ドライバーの仕事をすることになります。この場合、働く準備として何が必要なのかを具体的な項目に分けて紹介します。
軽貨物運送の開業を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
営業所
軽貨物運送を開業する場合、営業所は個人事業主の自宅兼用で行うことが可能です。
営業所の条件は車庫が半径2km圏内であることに加えて、「兼用の住宅のうち非住宅部分の床面積が50㎡以下で、建築物の延面積の2分の1未満のもの」の条件を満たす必要があります。
営業所の要件としては市街化調整区域にないことをはじめ、農地法や消防法・建築基準法などの法令への適合性が求められます。
出典:軽貨物運送業を開業したい人へ【要件のご案内】|木村行政書士事務所
参照:https://kimura-gyouseishosi.com/car/kei/keikamotsu_requirements/
車庫
車庫は営業所から2km圏内であることが必要です。使用する車両は軽自動車なため車庫証明書の必要はありませんが、地域によっては「車庫届出」が必要な場合があります。事前に確認しておきましょう。
駐車スペースについては8㎡以上を確保しましょう。そして使用する土地に関しては、都市計画法などに違反していないことを確認した上で、借入の場合には賃貸契約など土地の使用が確実であることが必要とされています。
出典:軽貨物運送業を開業したい人へ【要件のご案内】|木村行政書士事務所
参照:https://kimura-gyouseishosi.com/car/kei/keikamotsu_requirements/
車両
軽貨物車両は1台以上あれば良いとされています。その他の条件として乗車定員は2名以下で、タクシーと区別するための外装はしないことなどが挙げられます。
車種に関しては幌車をはじめ、冷蔵・冷凍車やワンボックス車、軽トラックなどの車両があり、それぞれ使用目的に応じての使い分けるのが良いでしょう。
出典:軽貨物運送業を開業したい人へ【要件のご案内】|木村行政書士事務所
参照:https://kimura-gyouseishosi.com/car/kei/keikamotsu_requirements/
休憩・睡眠施設
運送業の許可申請上、ドライバーの休憩・睡眠施設は必須となっています。それは、運行計画の上でドライバーの仮眠や睡眠を十分に取らないと、運行できないことが予想されるからです。
休憩・睡眠施設は営業所に併設されることが条件のため、個人で運送業を行う場合は自宅の1室をこれに指定できます。
睡眠施設特有の要件として挙げられるのは、1人当たり2.5㎡以上の広さを確保し、営業所と休憩・睡眠施設の区別が明確になるように仕切りなどの措置が必要です。
出典: 運送業許可|営業所と休憩室・睡眠施設の要件を確認|さむらい行政書士法人
参照:https://samurai-law.com/unso/unso14/
運行管理体制
軽貨物運送業においては、個人事業主が運転手となる場合が想定されます。この場合、運行管理責任者は個人事業主である運転手でも可能となります。
さらに、「軽貨物の運行管理責任者」には特別な資格は必要ないとされています。
出典:軽貨物運送業を開業したい人へ【要件のご案内】|木村行政書士事務所
参照:https://kimura-gyouseishosi.com/car/kei/keikamotsu_requirements/
損害賠償能力
軽貨物運送の開業に必要な条件の1つが損害賠償能力です。
これは、「自動車損害賠償法」に基づいた自賠責保険に加入することや、一般自動車損害保険(任意保険)の契約などにより、十分な損害賠償能力を持つことが必要であるとされています。
特に任意保険については、もしもの事故対応のためにも対人賠償保険と対物賠償保険には入っておくことが賢明といえるでしょう。
出典:貨物軽自動車運送事業の経営届出等の取扱いについて|関東運輸局運輸支局長
参照:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_koutu/kamotu/kamotu_jigyoukaisi/date/kei_kouji.pdf
運送約款・運送料金表
運送人と荷主との間で定められた運送契約が運送約款です。これには、両者間に「特約」がない限り、運送規約に関しては運送約款に従うとされています。
一方、運送料金表は黒ナンバー取得の際に提出が必要な書類の1つで、荷物主に対しての運賃提示に使用します。
運送約款は運送の対価である「運賃」や、その他の対価である「料金」が適正に収受される環境整備が目的であるとされます。
出典:標準貨物自動車運送約款のポイント|弁護士法人長瀬総合法律事務所
参照:https://houmu.nagasesogo.com/media/column/column-2131/
軽貨物運送の開業にかかる費用は
軽貨物運送の開業に当たっては、具体的にとのような費用が掛かるのでしょうか。
ここでは、車両購入などの初期に発生する開業資金をはじめ、燃料費などのランニングコストや社会保険料などの気になる費用とその目的などについて解説します。
車両購入費等の開業資金
軽貨物運送の開業に掛かる費用の中で、大半を占めるのが車両購入費です。
購入については新車の場合と中古車の場合が考えられ、市場価格によりますが前者で約250万円の資金が、そして後者の場合には約50万円の資金が必要となるでしょう。
他には、リース契約により定額で開業資金を抑える選択肢もあります。
開業資金の大半を占める車両以外にも、スマートフォンなどに掛かる通信費をはじめ、車両の維持費なども開業資金として準備が必要になります。
ガソリン代等のランニングコスト
軽貨物運送を営む上でのランニングコストについて、割合が大きいとされるのがガソリン代でしょう。
使用する距離や車種などによる違いはあるものの、1ヶ月の走行距離は約600km〜800kmで、給油時には満タンで約30L〜40Lが必要とされます。このことからも、日々のコストの多さが窺えます。
その他、ガソリン代と並んで掛かるランニングコストにはオイル交換代や携帯などの通信費、駐車場代などが挙げられます。
各種社会保険料
一般的にここで該当する社会保険は、健康保険はじめ年金保険・雇用保険・介護保険・労災保険です。
更に社会保険は、従業員を1人でも雇用した場合に加入義務が課せられることになります。その場合の社会保険料は、会社と従業員それぞれが半分ずつの負担となることが基本とされます。
出典:労働保険・社会保険の手続き|東京ウィング社労士事務所
参照:https://sr-yamada.jp/service05
軽貨物運送を開業するメリット
軽貨物運送業は一般的に、独立開業する際には少ない資金と小リスクで開始できるとされています。それ故人気が上昇中の軽運送業ですが、開業するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、軽運送を開業するメリットについて詳しく解説します。
- 少ない自己資金ではじめられる
- 手続きが簡単ですぐ開業できる
- 青色申告で節税を狙える
- 軽貨物運送の需要が高まっている
少ない自己資金ではじめられる
軽貨物運送の開業には、普通免許と軽車両と車庫が揃えば店舗を構えなくても済むため、自己資金が少なくて済むといったメリットがあります。
具体的な開業資金については、約50万円〜250万円掛かるというのが一般的な見方です。そして、この金額のほとんどが車両の購入費用といわれています。
少ない自己資金ではじめられることは、これから転職を考える人にとっても人気の職業といえるでしょう。
手続が簡単ですぐ開業できる
軽貨物運送の開業には、届け出たらたちまち開業できるといったハードルの低さに魅力があるといわれています。
更に軽貨物運送の手続きは「届出制度」になっています。これは、その都度役所の判断を仰ぐような「許可制度」と比べても手続きが簡単といえるでしょう。
加えて、普通運転免許と軽貨物車両と車庫があれば店舗も必要なく、簡単に開業できるといったメリットがあります。
青色申告で節税を狙える
軽貨物運送業は、管轄の税務署に開業届を提出することになっています。その際には「青色申告特別控除」の適用が認められます。
青色申告についての特典として、「事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申請者」が国税庁が定める「腹式簿記」による記帳で申告期限内に申告書を提出した際には、最高で55万円(令和元年以降は65万円)の控除ができるとされています。
出典:No.2070 青色申告制度|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
軽貨物運送の需要が高まっている
近年、インターネットを通じての買い物需要に拍車がかかっています。それに伴い、大手ショッピングサイトの倉庫からは、個人宅への荷物が急増しているのが現状です。
この傾向から見えてくるのは、今後も宅配便の需要に比例するように軽貨物運送の需要が高まっていくことです。需要が高まると、それに伴い運送に必要なドライバーの需要も高まっていくでしょう。
軽貨物のメリットを活かして開業してみよう
軽貨物運送は、普通運転免許証と軽車両1台に駐車場があれば、簡単な手続きで開業できます。特に提出書類が不備なく受理されれば、すぐにでも事業が開始できるのが魅力でしょう。
また、開業までのハードルの低さはもちろん、個人事業主として案件選びやスケジュル設定も、自身の都合で行えます。
加えて、自宅を本拠地としながら営業できることや、開業までの資金がそれほど掛からないといったことも、メリットとして挙げられるでしょう。
これらのメリットを活かしながら、軽貨物運送業の開業にチャレンジしてみましょう。