運行管理者の仕事内容とは?メリットや資格取得までの流れもあわせて紹介
- 物流
「運行管理者って具体的に何を管理するの?」
「どんな資格が必要なの?」
「運行管理者のメリットデメリットは何?」
これらの疑問を抱いたことはありませんか。運送業で運行管理者は欠かせませんが、具体的な仕事内容は分からないという人が多いのではないでしょうか。
この記事では、運行管理者の仕事内容を詳しく解説し、メリットやデメリット、運行管理者に必要な資格を取得するまでの流れなどを紹介しています。
この記事を読むことで運行管理者の幅広い仕事内容を理解でき、向いている人の特徴や年収など、運行管理者の基本的な知識が身につくでしょう。また、試験内容や合格するための方法なども詳しく解説するため、運行管理者に興味がある人は勉強法の参考になります。
運行管理者とはどのような仕事なのか、どのような資格が必要なのか、気になる人はこの記事を参考にしてみてください。
運行管理者の仕事内容
運行管理者はドライバーや公共の安全を守ることが仕事です。それだけでなく、安全を守りながら配達の納期なども守らなければなりません。そのため、仕事内容は多岐に渡ります。
ここからは、運行管理者の仕事内容を紹介していきます。どれも責任を伴う重要な業務のため、一つ一つ確認していきましょう。
講習やトレーニングを計画
運行管理者はドライバーの事故を未然に防ぐためにも安全教育を計画し、実施しなければなりません。安全確認だけでなく、ドライバー自身の安全意識を高めることも大切な業務です。そのため、判断力や指導力が求められる仕事といえるでしょう。
労働時間や残業時間の把握
運行管理者はドライバーの過労運転を防ぐため、労働時間や残業時間を把握していなければなりません。そのためにも業務前後に対面による点呼を行い、出勤と退勤、ドライバーの健康状態、アルコール摂取の有無などを確認します。
残業している場合は残業時間が長すぎないか、残業の日数が多すぎないかもチェックし、ドライバーが労働時間に見合った報酬を受け取れるようにサポートもします。
トラックの管理・点検
万一車両に何らかの問題があった場合、事故につながる恐れがあるため、運行管理者は使用するトラックに問題がないかのチェックも行います。ドライバーの健康状態の確認同様、車両の点検も欠かせません。
また、車両の点検だけでなく台数も管理しています。問題がある車両を見つけた場合、使用できる台数で運行スケジュールに支障がでないか判断しなければならないのです。
整備管理者などと連携してトラックの管理と点検、そして異常を見つけたときの原因調査をすることも、ドライバーが安全に運行するために欠かせない業務といえるでしょう。
スケジュール作成
各ドライバーがスムーズに業務を遂行できるような運行スケジュールの作成も、運行管理者の仕事です。経験豊富なドライバーや新人ドライバーなど、その人の経験やキャリアに合わせたスケジュールが必要になります。
また、連続運転時間の制限や、休息が必要な運転時間など基準も存在します。それらの基準を超えないようにしつつ、休憩時間も考慮し、それぞれのドライバーの能力に合わせた計画を立てなければならないのです。
配送ルートの計画
配送ルートの計画も、効率のよい業務遂行のためには欠かせない仕事です。ドライバーの能力に合わせ、尚且つ余計なコストを削減できるようなルートを選ばなければなりません。
その日の天候や道路状況、例えば工事中などで通行止めになっていると迂回しなければならないため、そのあたりの情報も常に把握する必要があります。それらの情報を踏まえて、ドライバーが安全に納期を遵守できる適切なルート管理も、運行管理者の重要な業務といえるでしょう。
運行管理者になるには資格は必要?
運行管理者はドライバーや公共の安全を守る必要があるため、誰にでもなれる仕事ではありません。国家資格である「運行管理者資格者証」が必要になります。運行管理者試験に合格するか、講習を受けて運行管理補助者の実務経験があるなど、条件をクリアして交付してもらいます。
また、試験の合格率は20~30%程度と難易度が高いため、しっかりと講習を受けて勉強しなければなりません。
出典:運行管理者資格者証の交付を受けるには|国土交通省 中国運輸局
参照:https://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/gian/unkanshou2.html
運行管理者の仕事に向いている人の特徴
運行管理者にはどのような人が向いているのでしょうか?
ここでは、向いている人の特徴を2つ紹介します。どちらも運行管理者にとって欠かせない要素です。それぞれ確認していきましょう。
責任感の強い人
運行管理者は仕事内容からも分かる通り、ドライバーや公共の安全を守る重要な業務をこなします。車両の点検やドライバーの労務管理に対して、「このくらいなら問題ないだろう」と責任感のない作業はあってはならないのです。
そのため、責任感の強い人が向いており、ルールや基準を守れないような人には務まりません。
また、ドライバーの安全に考慮したスケジュールや配送ルートを選びながらも、納期にはしっかり間に合わせる必要もあります。悪天候や急な通行止めでも臨機応変に対応しなければならないのです。
安全と正確さに対して責任感を持ち、臨機応変に業務を遂行する人が向いている仕事といえるでしょう。
コミュニケーション能力がある人
運行管理者はドライバーの健康や能力、キャリアなどを把握しなければなりません。年齢層も様々な人材を管理し、リーダーのように取りまとめる必要があります。そのため、コミュニケーション能力が必要不可欠といえるでしょう。
ドライバーの能力や健康状態の把握が曖昧だと、それぞれのドライバーに適したスケジュールや配送ルートを決められません。そこから事故につながる恐れもあるため、誰とでもきちんとコミュニケーションが取れる人でないと務まらない仕事といえるでしょう。
運行管理者の仕事の年収相場
運行管理者の年収は、中小企業で300万~400万円程度といわれています。資格の取得には苦労しますが、運送ドライバーと比べて年収は少ない傾向にあります。そのため、弁護士や税理士のように資格を取得しても大きく稼げる業界ではないともいえるでしょう。
しかし、運行管理者として信頼や経験を積むと、部長や役員などを任されて給与が上がる仕組みがほとんどです。また、大手の場合は年収が500~800万円程度まで上がるため、経験を重ねることで昇給も目指せるでしょう。
運行管理者になるまでの資格取得の流れ
運行管理者になるために、必要な資格を取得するまでの流れを紹介します。流れを掴むと講習の受講や試験の申し込みのスケジュールなども立てやすくなるでしょう。注意点も押さえながら内容を確認してください。
試験を受けて資格を取得する場合
運行管理者の試験は3月頃と8月頃の年に2回行われます。国土交通大臣が実施機関として認定した「運行管理者試験センター」が実施する試験を受けましょう。
受験手数料は新規受験、再受験共に6,000円(非課税)です。その他、システム利用料660円(税込)、再受験の場合は事務手数料200円(税込)が発生します。
申し込み時に運転免許証などの本人確認書類、そして「基礎講習修了証」や「運行管理者講習手帳」も必要になりますので、忘れずに用意してください。
試験日までに運行管理者基礎講習を修了するか、1年以上の運行管理補助者の実務経験があれば試験を受けられます。試験日までに講習が修了予定であっても申し込みはできるため、必ず試験日までに受験資格を満たしましょう。
出典:受験概要|公益財団法人 運行管理者試験センター
参照:https://www.unkan.or.jp/outline/
試験を受けずに資格を取得する場合
試験を受けなくても運行管理者資格者証を取得することは可能です。条件は基礎講習を1回、一般講習を4回受講し、さらに5年以上の運行管理補助者としての実務経験が必要になります。
講習は年に何回も行われますが、カウントは1年に1回です。そのため、試験を受けずに資格を取得する場合は最低でも5年は必要になります。
さらに、カウント開始は基礎講習を受けてからになるため注意が必要です。基礎講習を受ける前に一般講習を受けていても、その講習はカウントされません。
また、実務経験の証明書が必要になるため、勤務先の事業所で「運行管理に関する実務経験証明書」の必要事項に記入してもらいましょう。事業所が複数にまたがってしまう場合も、それぞれの証明が必要になります。事業所に連絡して、証明書に記入してもらうようにしましょう。
出典:運行管理者資格者証の交付を受けるには|国土交通省 中国運輸局
参照:https://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/gian/unkanshou2.html
資格取得するまでの一連の流れ
試験の申し込みは、試験当日の3~4か月前頃から行われます。試験日までに基礎講習の修了が受験の条件になるため、試験日までに条件を満たせるように受講のスケジュールを立てましょう。
合格発表は試験終了後の1か月以内です。結果は運行管理者試験センターのサイトに公表されますが、試験の申し込み時に結果の通知を希望すると、試験結果通知書が送付されます。
合格を確認した後は、通知から3か月以内に運輸支局で手続きを終えます。その際、所定の書類も忘れずに揃えるようにしましょう。手続きが完了し「運行管理者資格証」が交付され事業所で選任されると、運行管理者として業務に就くことができます。
「運行管理者資格証」に期限はありませんが、悪質な法令違反が発覚すると資格を返納しなければならないため注意が必要です。また、資格取得後も運行管理者に選任された場合は2年に1回の一般講習の受講が必要になるため、忘れずに受けるようにしましょう。
出典:試験を受けた方|公益財団法人 運行管理者試験センター
参照:https://www.unkan.or.jp/after/
出典:運行管理者の講習について|国土交通省 地方運輸局
参照:https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/ishikawa/study/Training_for_UNKAN.pdf
運行管理者の試験内容
運行管理者の試験内容は一つではありません。また、合格基準にもいくつかの注意点が存在します。それらを踏まえて合格するための方法を理解し、効率よく試験勉強を進めましょう。
貨物・旅客の2種類がある
運行管理者の試験は貨物と旅客の2種類に分かれています。貨物は物流を担うトラックなど、旅客はタクシーやバスなどを指します。そのため、それぞれの資格を取得するためには、別々で試験を受けなければなりません。
傾向としては旅客よりも貨物の方がニーズは高めです。求人数も多いため、どちらを取得するか迷っている場合は貨物を選択すると活躍できる機会を得やすくなるでしょう。
合格基準
30問の問題は5分野に分かれており、それぞれ4~8問ずつの構成です。原則として、30問中60%以上の得点が必要なため、18問以上正解すると合格できます。ただし、各分野1問以上の正解は必要であり、分野によっては2問以上正解しなければならないため注意しましょう。
出典:受験概要 CBT試験 新規受験申請|公益財団法人 運行管理者試験センター
参照:https://www.unkan.or.jp/outline/cbt_new.html
合格するための方法
講習を受け、一通りの知識が身についた段階で過去問題や模擬試験を解いてみましょう。実力を試すだけでなく、得意分野や苦手分野など自身のレベルを把握できます。実際の試験を意識して取り組み、苦手分野は重点的に対策しましょう。
また、基礎講習を受けた後できるだけ早く試験を受けることも大切です。運行管理者の試験内容は年々難しくなっているといわれており、法律の改正などで学んだ内容が古くなっていく可能性もあります。勉強し直す手間を省くためにも、講習を受けたらすぐに受験しましょう。
試験当日も、優先的に得意分野や解けそうな問題を意識して解くことが重要です。合格条件は満点の60%以上得点することではありますが、各分野での正解も必要になります。試験時間と最低限の正当数を意識しながら、効率よく問題を解いていきましょう。
運行管理者になるメリット
運行管理者は誰でもなれる職種ではありません。試験の合格率は低く、仕事内容も責任を伴う重要な業務を任されます。大変な面もありますが、同時に様々なメリットも存在します。それぞれ確認していきましょう。
就職・転職に有利になりやすい
運行管理者の試験の合格率は低いため、資格取得者は各業界で確保したい人材と思われる可能性が高いです。即戦力として採用されやすいため、運行管理者は就職や転職に有利になるといえるでしょう。
将来性が期待できる
ここ数年、通販サイトの普及や中古品のマーケットプレイス市場の成長により、運送業の需要は高まっています。そのため、運行管理者として活躍できる場は広がっているといえるでしょう。将来性が期待でき、内勤であるため長く働くことができます。
さらに、資格取得者は業界内で必要とされる可能性が高く、昇給や昇進も期待できるでしょう。大きな責任を伴いますが、安定したキャリアを築けるメリットがあります。
やりがいがある
運送会社は、運行管理者がいなければ業務をまわしていくことができません。配送ルートやスケジュール、ドライバーの健康管理など、運行管理者が全て管理するため運送業には欠かせない重要な存在です。そのため、業務に対してやりがいを感じることができるでしょう。
悪天候やドライバーの体調不良など様々な問題に対処しなければなりませんが、適切に対処することで周りから感謝されることもあります。また、運行管理者の手腕によって業務内容を改善していくことも可能です。
運送業になくてはならない存在だからこそ、大きなやりがいとモチベーションを持って働くことができるでしょう。
内勤で仕事ができる
運送業のドライバーは荷物の積み込みや長時間の運転など、体力を必要とします。しかし、運行管理者は基本的に内勤であるため力仕事ではありません。年齢や体力の衰えに関わらず、長く働くことができる仕事といえるでしょう。
また、内勤は悪天候や暑さ、寒さなど気候の変化にも左右されないため、責任は伴いますが働きやすい環境もメリットの一つです。
運行管理者になるデメリット
運行管理者の仕事内容は多岐に渡るため、業務量の多さがデメリットとしてあげられます。夜勤が必要な運送会社の場合は不規則な生活になるため、体力的に辛く感じる可能性があります。
また、運行管理者はドライバーと公共を守る仕事であるため、責任の重さに苦しむこともあるでしょう。特に人手不足の運送会社では、無理強いをしてでもドライバーに業務を依頼することもあります。
しかし、万一問題が発生した場合は、依頼した運行管理者も責任を問われることがあるのです。これらの重責から辞めてしまう人も少なくはありません。
さらに、ドライバーや上司、取引先との間に立ってやり取りをするため、人間関係のストレスもデメリットとして挙げられます。
ドライバーからの要望や上層部からの伝えにくい指示などを伝えなければなりません。それらの内容に対して文句をいわれてしまうこともあるため、板挟みの状態を苦痛に感じることもあるでしょう。
運行管理者の仕事を理解し資格取得を検討しよう
ドライバーや公共の安全を守るためには運行管理者の存在は欠かせません。
責任を伴う仕事であり資格も簡単には取得できませんが、大きなやりがいを感じられ、将来性も期待できる仕事といえるでしょう。誰にでも務まる業務ではないため、メリットやデメリット、そして自分の向き不向きも理解したうえで資格取得を検討してみてください。