夜間走行をする時に注意すべきことは?危険要因や事故原因も詳しく紹介
- 物流
これからトラックドライバーとして活躍することを考えている人にとって、大きな不安要素となるのが事故のリスクでしょう。決められた時間までに積荷を目的地に届けるともなれば、夜間走行も避けては通れなくなります。
この記事では、トラックの夜間走行に潜んでいる危険要因や安全に走行するポイント、事故を起こしてしまった場合の対処法を紹介しています。夜間走行のメリット・デメリットも併せて紹介しているため、運送スケジュールを立てる際の参考にもなるでしょう。
夜間走行時におさえるべきポイントを理解することで、潜在的な危険を回避するなど、適切な緊張感を持って業務に取り組めるようになります。
安心安全に運送するためにも、ぜひこの記事を参考にしてください。
トラックドライバーにとって夜間走行することのメリット・デメリット
冒頭でも触れましたが、トラックドライバーになれば夜間走行が必要になることもあるでしょう。ここではまず、夜間走行にはどのようなメリット・デメリットがあるのかを整理していきます。
夜間走行のメリット
メリットとしては、渋滞に巻き込まれにくいことと、給与が割増になることが挙げられます。
決められた時間に納品することを求められるトラックドライバーにとって、渋滞リスクを避けられるのは大きなメリットになるでしょう。渋滞が続く場合はイライラすることもあるため、精神的な観点からもあまりよくありません。
納品先の目的地への所要時間も計算しやすくなるので、運送スケジュールのブレが少なくなることもメリットとして挙げられます。
2点目の給与の割増についてですが、傾向としては20〜30%ほど上乗せされることが多いです。仮に時給換算した場合、日勤が1,000円であれば夜間は1,200〜1,300円ほどになるでしょう。
夜間走行のデメリット
続いてはデメリットに焦点を当てていきます。ある程度予測できる場合もありますが、夜間は視界が悪くなるため、交通死亡事故を起こしてしまう可能性が日中に比べると高くなることです。
夜間の方が重大事故になりやすい、と言い換えることもできるでしょう。
シンプルに交通事故全体を時間帯別で割合にすると、高速道路の場合日中が73.4%・夜間が26.6%と圧倒的に日中が多いことが分かります。
ところが、交通死亡事故に絞ると日中が49.3%に対して、夜間が50.7%となっています。要因は後述しますが、交通量が少ないことによるスピードの出し過ぎなどが挙げられるでしょう。
出典:令和2年交通安全白書(全文)|内閣府
参照:https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r02kou_haku/zenbun/genkyo/h1/h1b1s1_2.html
夜間走行時の交通事故は重大事故に繋がる傾向がある
ここまで読んで、夜間走行にはメリットがあるものの、重大事故を起こしてしまうリスクが高まるというデメリットがあることが理解できたでしょう。
交通死亡事故の発生件数については、日中よりも夜間の方が上回っているのが現状です。些細な操作ミスが、重大な事故に繋がりかねないことを認識しながら、運転する必要があると言えます。
出典:第1編 陸上交通 第1部 道路交通 第1章 道路交通事故の動向|内閣府
参照:https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r02kou_haku/zenbun/genkyo/h1/h1b1s1_2.html
夜間走行で意識すべき危険要因
ここからは、実際に夜間走行する際に、トラックドライバーが意識すべき危険要因を6個紹介します。とても身近な内容も含まれているため、この機会に理解を深めておきましょう。
歩行者の発見が遅れてしまう
夜間は周囲が暗くなるため、視界が悪くなります。そのため、日中に比べると歩行者を発見するまでに時間がかかってしまうでしょう。
歩行者が暗めの色の服を着ていた場合、発見はさらに難しくなることが予想されます。また、歩行者だけではなく、無灯火の自転車がいるかもしれないことも心がけておく必要があります。
グレア現象
夜間や雨天時に走行していると、歩行者や自転車の姿が見えなく(見えにくく)なったという経験をお持ちの方もいるでしょう。あまり聞きなれないかもしれませんが、これはグレア現象というものです。
グレア現象は蒸発現象とも呼ばれるもので、夜間に対向車とすれ違う際に、自車と対向車のライトが交錯する場所にいる歩行者などが、突然ドライバーから見えなくなる現象を指します。
突然見えなくなる様子から蒸発という言葉で表現されており、対向車のライトによって光の当たっている部分にあるものを認識しづらくなることが原因と言われています。
グレア現象をドライバー側が防止することは難しいため、見えにくい部分に歩行者等がいるかもしれないという心がけが重要です。
疲労の蓄積
基本的に長距離運転になりやすい夜間走行では、疲労が蓄積しやすくなります。自認するまでに時間がかかる上に、運送スケジュールの逼迫等によるプレッシャーのような外的要因でも蓄積していきます。
また、周囲が暗くなることで視界が悪くなり、それが緊張状態を招くため、ただ運転しているだけでも疲労が蓄積しやすいでしょう。
注意力が低下する
前述した疲労の蓄積が原因になる場合もありますが、夜間は交通量・歩行者や自転車の数が減り、ドライバーの油断を招きやすい時間帯となります。それが結果的に、注意力を低下させることに繋がります。
また、夜間は暗くなることで視覚から得る情報が減るため、漫然運転になりやすいと言えます。漫然状態に陥ると、ブレーキやハンドル操作などの危険回避行動が遅れやすくなるため、事故のリスクも高くなるでしょう。
無意識に車間距離を詰めてしまう
夜間走行時は、前方の車両との車間距離が詰まりがちになります。これまでに何回か触れていますが、夜間は視覚情報が減ることが要因として挙げられるでしょう。
日中は、前方の車両のボディや周囲の標識、車線など車間距離を計るための情報を多く取り入れることができますが、夜間ともなると前方の車両のテールランプくらいしか情報がなくなってしまいます。
また、運送スケジュールを完遂するための責任感のようなものから、無意識にアクセルを踏みすぎてしまうことも1つの要因として考えられます。
スピードが出しやすくなる
日中と比べて、夜間走行時は交通量が少ないためスピードが出しやすくなります。これは、渋滞リスクが少ないことや視覚情報が減ることで、速度感が掴みにくくなることが原因として挙げられます。
これらの現象は、運転中に無意識に起こり得るものなので、夜間はスピードが出やすいものという事前認識が重要になるでしょう。
夜間走行でも安全に運転するためのポイント
ここまで、夜間走行時の重大事故リスクとその発生要因について触れ、体系的に理解できたのではないでしょうか。しかし、本当に重要なのは、いかにして事故を未然に防ぐかということです。
ここからは、夜間走行でも安全に運転するためのポイントを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- 無理な右折や左折をしない
- スピードメーターの確認
- 車間距離を十分に保つ
- ハイビームとロービームの使い分け
無理な右折や左折をしない
日中に比べて夜間は、歩行者や自転車の視認が難しくなるため、いつも以上に右左折時に注意が必要になります。無理をせず、余裕を持ってハンドルを操作するように心がけましょう。
右折時は、対向車線を直進してくる自動車に対して注意しがちですが、特に意識を向けるべきなのはバイクや自転車、横断しようとする歩行者です。自動車に比べてサイズが小さいこともありますが、無灯火の自転車や暗い色の服を着た歩行者の視認は難しくなります。
左折時については、目視の徹底が重要です。サイドミラーでの確認だけでは死角もあり、自転車や歩行者、すり抜けをしようとするバイクを見落としやすくなるため、注意しましょう。
無理な右左折をせず、基本をおさえてハンドルを操作してください。
スピードメーターの確認
危険要因の部分でも触れましたが、夜間はスピード超過になりやすい時間帯です。そのため、こまめにスピードメーターを確認して、速度状況を把握するようにしましょう。
当然、スピードメーターを注視するのは避けるべきですが、視線を動かすことは眠気防止にも繋がる可能性があるので、日頃の運転から心がけてください。
車間距離を十分に保つ
夜間は車間距離が詰まりやすくなるので、いつも以上に車間距離を十分に保つことが大切です。
道路交通法で適切な車間距離が定められているわけではありませんが、車両が停止するまでにどれだけの距離を必要とするのかは、理解しておく必要があるでしょう。
ハイビームとロービームの使い分け
夜間走行時は特に、状況把握が重要になります。そのためにも、ヘッドライトのハイビームとロービームを効果的に使い分けていきたいところです。
ハイビームは走行用前照灯、ロービームはすれ違い用前照灯とも呼ばれているように、夜間の走行時は前照灯を上向き(ハイビーム)にすべきとの記載が明確化されています。
また、性能についても、前者は前方100メートル、後者は前方40メートルの距離にある交通上の障害物を確認できるものとされています。つまり、ハイビームはロービームと比べて、2倍以上遠くから歩行者等を発見できることになります。
出典:ハイビームの上手な活用で夜間の歩行者事故防止|警察庁
参照:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/highbeam.html
夜間走行中に事故にあった場合は?
夜間走行における事故防止策を説明してきましたが、それで事故発生確率をゼロにすることは難しいです。では、実際に夜間走行中に事故にあってしまった場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。
続いては、万が一、夜間走行中に事故にあった場合の対処法を紹介します。この対処法を参考にして、落ち着いて行動できるようにしましょう。
警察の現場検証が終了するまで現場で待機
夜間走行中に限った話ではありませんが、事故にあった場合、警察の現場検証が終了するまで現場で待機しなければなりません。
運送スケジュールがあるため、早く行かなければと思う方もいるでしょうが、事故現場を離れないようにしましょう。
所要時間は事故の状況にもよりますが、1〜2時間程度だと言われています。
反射材が付いた衣服を着用する
反射材は自動車のライト等が当たると明るく光って見えるため、他の車のドライバーから視認されやすくなるという効果があります。
夜間走行中は周りが見えづらくなっていることから、多重事故に繋がらないようにするためにも、反射材が付いた衣服を着用しましょう。
事故は予測できるものではありません。普段から、反射材が付いた衣服やLEDライト等を車内に常備しておくことが大切です。
安全な夜間走行をするには?
事故にあってしまった場合の対処法や、現場検証にかかる時間を理解すると、安全に運転することがいかに重要なのかが再認識できたでしょう。ここでは最後に、安全に夜間走行をする上で大切にしたいポイントを紹介します。
速度超過を避ける
運送スケジュールを厳守しなければならない、という責任感から陥りやすいのが速度超過です。しかし、事故を起こしてしまっては、大切な積荷の破損だけではなく車両の破損、何よりも大切な命が失われてしまう可能性があります。
速度超過を避けることが、結果的に安全かつ確実に積荷を届けることに繋がるでしょう。
効果的な休憩時間を確保する
疲労や違和感を覚えた場合には、休憩をとることが望ましいです。
休憩時間の基準としては、連続して4時間運転したら30分以上休憩をとることです。これは、義務付けられているものになります。
可能なであれば、運送スケジュールを立てる時点で、効果的な休憩時間を確保できるようにしておきましょう。
出典:労働基準部 監督課 自動車運転者の労働時間改善基準 トラック|静岡労働局
参照:https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/hourei_seido/kantoku50/kantoku51.html
安全な夜間走行を心がけよう
一定のデメリットはありますが、運送スケジュールを円滑にこなすためには夜間走行は避けては通れないでしょう。安全に運転するためのポイントをおさえれば、安心して夜間走行できます。
今回紹介した内容を踏まえて、プロのトラックドライバーとして自覚を持った運送業務ができるように心がけましょう。