トラックの事故防止でドライバーが心がけるべき点とは?あおり運転についても解説
- 物流
「トラックの事故で多い原因は?」
「事故防止のためにドライバーが心がけるべきことは?」
「あおり運転にあったときは、どうすればいい?」
トラックの運転は一瞬の気の緩みが甚大な被害をもたらすこともあるため、事故やあおり運転を避ける努力をすることもトラックドライバーの責務です。
この記事では、トラックの事故原因や事故防止のために心がける点などを紹介していきます。また、あおり運転に関しても解説するため、この記事を読むことで、あおり運転が増えている昨今、より安全にトラックを運転するための心構えができるでしょう。
トラックドライバーの皆さんがこの記事を読むことは、安全運転へ向けての注意喚起となります。事故防止のための意識づけをしましょう。
トラック事故の発生件数は年々減少傾向にある
国土交通省の「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書(令和2年度)」によると、トラック事故の発生件数は年々減少傾向にあります。
平成22年の25,452件から令和元年には15,606件になり、およそ10年で4割ほど減っています。
出典:自動車運送事業に係る交通事故対策検討会報告書(令和2年度)|国土交通省自動車局
参照:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03analysis/resourse/data/r02-1.pdf
トラック事故の原因で多いのは?
トラックの事故は同じような状況で発生することが多いため、そのポイントを頭に入れておくことで、事故防止につながるでしょう。
ここでは、トラック事故の発生リスクの高い原因について紹介していきます。
追突事故
公益社団法人 全日本トラック協会の調査(令和3年)によると、トラック事故の中でもっとも頻度が高いのは、圧倒的に追突事故です。
トラックの性能が上がっている現代においても、脇見運転や居眠り運転、不注意などによって、停車中の車や前を走行中の車に追突してしまうという事故が起きています。
走行中の適度な緊張感や的確な状況判断、さらに健康管理の徹底などによって、追突事故を防ぐ必要があるでしょう。
出典:事業用貨物自動車の交通事故の発生状況|公益社団法人 全日本トラック協会
参照:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/anzen/kotsuanzen_ichiran/jiko_r03.pdf
車両の整備不良
すべてのトラックは車検だけでなく、運行前点検や定期的なメンテナンスも重要です。トラックの事故はドライバーの未熟な運転技術や低い安全意識のほかに、整備不良に起因して発生することも珍しくありません。
特に制動装置系の整備不良は、深刻な事故につながる可能性があります。そして、万が一車両の整備不良で死傷事故を発生させると、ドライバーだけでなく所属する会社も責任が追及されるでしょう。
それに加えて、積んだ荷物が崩れて周辺にいた人に被害を与えるケースもあります。積み下ろし時や走行中の落下物による後方車への衝突なども、トラックにありがちなトラブルです。
トラックの事故防止対策としてドライバーが心がけるべきポイント
トラックの事故発生件数は減少傾向にあるとはいえ、ドライバーは大きなリスクと責任を負いながらトラックのハンドルを握ることになるため、事故防止のための努力は必要です。
ここでは、トラックの事故防止対策としてドライバーが心がけるべきポイントをご紹介します。
- よそ見・脇見をしない
- 十分な車間距離を確保する
- 右左折時の巻き込みに注意する
- 労働時間の管理
- 徹底した健康管理
- 過度な自信を持たない
- デイライトの点灯を心がける
- コーナリングは十分に減速する
- 事故が起こりやすい状況を把握しておく
よそ見・脇見をしない
トラックに運転支援システムが搭載されても、運転するのはドライバーです。運転中のよそ見や脇見が事故につながることを常に心して、前方を確認しながら集中して運転しましょう。
走行中は、スマートフォンだけでなく飲料や伝票、マップも手にとらないことや、運転に集中するために車内は整理・整頓を心がけることなどが大切です。
十分な車間距離を確保する
当然のことながら、車両重量が大きいトラックは、走行中急に止まることはできません。特に多くの荷物を積載しているトラックは、制動距離が長くなり急停車できないため、十分な車間距離を確保することが重要です。
制限速度を遵守することや早めのブレーキを心がけること、前方車が路外に出る動きを見せた場合などはいつでもブレーキを踏めるようにしておくことも、車間距離の確保とともに意識しておくポイントです。
右左折時の巻き込みに注意する
トラックが右左折する際は、内輪差が生じて巻き込み事故の原因となります。そのため、内輪差を意識した運転を心がけましょう。
トラックの死角部分については、目視およびミラーやバックカメラなどからの情報を活用し、安全確認をしっかりと行い、巻き込み事故を防ぐ必要があります。
労働時間の管理
ドライバーの過労は、居眠り運転や判断力の低下などを引き起こす可能性があります。人材不足が深刻なトラック業界では、勤務時間を厳守することは難しい側面もあります。しかし、事故を防ぐためには、自分の労働時間の管理をしっかりと行うことも仕事の1つでしょう。
また、勤務時間だけでなく、余裕のある運行計画を立てることや、会社がドライバーの健康と疲労に気を配り、焦らせないように支援することも重要です。
徹底した健康管理
車体の大きなトラックをコントロールするためには、高度な運転技術と高い注意力・判断力が必要になります。体調不良で運転に臨めば、当然のことながら事故につながるリスクが上がるため、トラックドライバーには徹底した健康管理が求められます。
日常的な健康管理としては、十分な睡眠をとり、適度に運動し、栄養バランスの取れた食事を摂りましょう。また、運転中に眠気や疲れを感じたり、高速道路に乗って1時間以上たったりした際は、休憩をとります。
過度な自信を持たない
トラック事故の発生率は、初心者ドライバーよりもベテランドライバーの方が高い傾向にあります。年齢が上がれば、判断力や身体能力が低下していき事故を引き起こすと考えられますが、運転に対する慣れからくる不注意や判断ミスもあるでしょう。
トラックの運転にある程度の平常心や余裕は必要ですが、過度な自信は禁物です。適度な緊張感とフレッシュな気持ちを持ち続け、漠然と運転することがないようにしましょう。
デイライトの点灯を心がける
夜間だけでなく、早朝や昼間もデイライト(昼間走行灯)を点けることによって車の視認性を高め、事故防止につなげることができます。
ただし、デイライトを新たに装着する場合は、国土交通省が定める保安基準を満たしている必要があります。デイライトの光度や色、照明部の大きさなどが決まっているため、注意しましょう。
出典:「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」第124条の2 昼間走行灯|国土交通省
参照:https://www.mlit.go.jp/common/001154266.pdf
コーナリングは十分に減速する
走行中のトラックがカーブに侵入する際や右左折の際は、曲がり切れなかったり、荷崩れが発生したりするリスクが高まります。
カーブや右左折の手前では十分に減速し、確実にコーナリングを行いましょう。同時に、先行車両や周囲の状況をしっかりと確認することも必要です。
事故が起こりやすい状況を把握しておく
トラックが事故を起こす要因や状況は、ある程度予測できます。カーブや坂道、見通しが悪い道路、渋滞が多い道路、歩道がない道など、事故が起こりやすい状況を把握し、それを意識して運転することが事故防止につながるでしょう。
会社が開催する事故防止に向けた教育セミナーや、公益社団法人 全日本トラック協会が提供するヒヤリハット集などで知識や情報を得ることが重要です。そのうえで、細心の注意を払って走行しましょう。
問題化している「あおり運転」
東名高速道路での事故をきっかけに問題視されるようになってきたのが、「あおり運転」です。特定の車両の運転を妨害するようなあおり運転は迷惑行為であり、悪質な違反行為として認識されつつあります。
運転を生業としている以上、トラックドライバーもあおり運転に遭遇するリスクはあります。ここからは、現在問題化しているあおり運転について、確認していきましょう。
そもそも「あおり運転」とは?
「あおり運転」に明確な定義はありませんが、あおり運転と捉えられる主な危険行為を紹介していきます。
まずは、後方から車間距離を極端につめる、隣の車線の走行車両に幅寄せする、正当な理由なくクラクションを鳴らし続けるなどの威圧・威嚇行為です。
また、故意に蛇行運転をして前方または後方の車両の走行を妨害したり、必要のないハイビームで前方車両の視界を妨げたりすることも迷惑行為になります。
これらの行為は相手車両の事故を誘発し、道路交通法違反に該当する妨害運転・危険運転にあたります。
出典:STOP!あおり運転!!|警察庁Webサイト
参照:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/law/R2poster/R2doukouhoukaisei_leafletB.pdf
あおられた場合の対処法
あおり運転を行う人に対して論理的な話し合いは不可能で、相手の心情を理解できないケースがほとんどです。また、どれほど気を付けていても、あおり運転のターゲットになるリスクはあるといえるでしょう。
あおられた場合の対処方法としては、相手の言動を無視し、サービスエリアなど安全な場所に停車して110番通報することです。警察が到着したら状況を説明するとともに、ドライブレコーダーの録画データを提出しましょう。
あおり運転にあった場合、絶対に車外に出てはいけません。また、相手の追突事故を誘発させるために急ブレーキをすることも厳禁です。どちらも更なるトラブルに発展する恐れがあります。
自分が「あおり運転」した場合はどうなる?
2017年頃のあおり運転による事故をきっかけに、妨害運転に対する罰則が創設されました。
これにより、他の車両の通行を妨害する目的で急ブレーキや車間距離不保持などの違反は最大で懲役3年、妨害運転により著しい危険を生じさせた場合は最大で懲役5年の刑に処せられることとなりました。
危険運転致死傷罪の対象となる行為も追加され、さらに厳罰に処せられることがあります。また、警察もあおり運転に対する取り締まりや捜査を強化しています。
妨害運転をした者は運転免許をはく奪されるため、トラックドライバーが罰則を科せられたら職も失うことになるでしょう。トラックを運転する際は周囲の車の動きなどに注意し、ゆずり合いながら運転してください。
出典:妨害運転罪の創設|警視庁
参照:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/aori.html
トラックの事故防止のための心がけを知っておこう
トラック事故の原因はさまざまですが、そのほとんどが人災といえ、トラックの安全運行と事故防止の実現はハンドルを握るドライバーにかかっています。
トラックを運転する際は、事故防止に向けた心がけを意識して、常に緊張感と責任感を持ち、業務に従事しましょう。