働き方改革によって改正された「貨物自動車運送事業法」とは?改正内容や罰則について紹介!
- 物流
貨物自動車運送事業法は、運送業を経営する上で必ず知っておかなければならない法律です。
しかし貨物自動車運送事業法がどのような法律なのか難しく感じておられるのではないでしょうか。
本記事では、貨物自動車運送事業法の内容と、改正内容・罰則について詳しく解説します。
貨物自動車運送事業法ってどんな法律?
貨物自動車運送事業法は、貨物自動車運送事業についての法律です。
貨物自動車運送事業とは、有償で三輪以上の軽自動車
または二輪の自動車で荷物を運送する事業のことをいいます。
貨物自動車運送事業を適正に行なうことを目的に制定された法律なのです。
合わせて、輸送の安全確保、公共の福祉の増進、
貨物自動車運送事業の発展を図ることも目的としています。
貨物自動車運送事業法は、貨物運送取扱事業法、鉄道事業法を合わせた
「物流三法」の1つであり、貨物運送の柔軟な事業展開を図っているのです。
貨物自動車運送事業法の一部が改正された理由とは?
貨物自動車運送事業法は、高度経済成長とともに運送業界が発展していったのですが、
その際の安全問題や労働問題に対応するために、1990年に施行されました。
当初は、運送業の質の向上や安全を遵守する目的で制定され、
その後、時代の変化に応じて改正が行なわれてきました。
法改正は、安全や規制を強化し、物流の効率化を促進することが目的です。
運転手の労働環境の改善、過重労働の解消も含めて改正が行なわれました。
詳細については、国土交通省の「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和5年法律第62号)について」にも
記載されていますので、合わせて参考になさってください。
ここでは法改正に至った背景について、詳しく示しておきます。
理由①2024年問題による運転手不足
2024年問題の1つとして、運転手の時間外労働の上限が設定されましたが、
そのことにより運送業界では運転手不足、効率低下などの問題が生じています。
運送業界の運転手確保と事業の効率化を図ることで、
物流が円滑に行なわれることが見込まれます。
理由②軽運送業における事故率増加
軽運送業で死亡事故・重傷事故が増加していますが、
その要因として、運転手の疲労、過密スケジュールといった運行管理上の問題が発生しているのです。
法改正により、厳格な安全確保と労働条件の改善を行ない、
安心できる運送業務の確立を図っています。
理由③適正運賃と取引条件の実現
国土交通省は、運送業界が健全なものであるために、
適性運賃の確保、取引条件の適正化に重点をおいています。
運送業者が安定した経営を行ない、
安全で効率の良いサービス提供の実現をめざしています。
貨物自動車運送事業法の改正の内容について
貨物自動車運送事業法改正の内容は以下の通りで2024年5月15日公布、数か月後に施行となります。
詳細については、国土交通省の「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和5年法律第62号)について」にも
記載されていますので、合わせて参考になさってください。
物流事業者への規制
荷主を含んだ物流事業者に対して、物流効率化を図るための努力義務が課せられました。
国が判断基準を設け、指導や調査などを行ないます。
国が定める規定以上の規模の物流事業者は、定期的な報告義務が付けられました。
トラック事業者への規制
元請事業者は、実運送体制管理簿(実運送事業者の名称等を記載)の
作成義務が課せられました。
運送契約の際は、実際の業務内容と運賃を記載した書面交付などが義務付けられており、
運賃には付帯業務などが含まれます。
トラック事業者が他の運送事業者へ下請けに出す行為の適性化が努力義務となりました。
軽トラック事業者への規制
軽トラック事業者に対しては貨物自動車安全管理者の選任と講習受講が義務付けられました。
軽トラック事業者の安全強化を図るもので、
事故発生時は国土交通大臣に事故報告をしなければなりません。
貨物自動車運送事業法に違反した場合の罰則って?
貨物自動車運送事業法に違反した場合の罰則には、以下のようなものがあります。
●3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、又はその両方
・無許可営業で一般貨物自動車運送事業を経営した者 ・名義貸し:一般貨物自動車運送事業の名義を他人に利用させた者 ・貸渡し:一般貨物自動車運送事業を他人にその名において経営させた者 |
●1年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金、又はその両方
・許可の取消しの規定による輸送施設の使用の停止又は事業の停止の命令に違反した者 |
上記は、懲役や罰金が科せられるほど、罪が重い罰則となっています。
他にも、100万円以下の罰金、両罰規定、50万円以下の過料の設定があります。
詳しくは「貨物自動車運送事業法」で確認してください。
運送業界は今後どうなる?
前述で、貨物自動車運送事業法の改正が行なわれる背景や目的についてお伝えしました。
法改正により規制強化された内容が複数ありますが、規制強化されたということは、
これまでに適正でない行為を行なった会社があると考えられます。
また運送会社は労働者である運転手に対して、適正な労働環境を提供しなければなりません。
前述では、軽運送業の死亡事故・重傷事故の増加について触れ、
その要因として、運転手の疲労、過密スケジュールといった
運行管理上の問題が発生していることについて取り上げました。
運転手の疲労や、過密スケジュールの防止と同類で挙げられるのが、
運転手の時間外労働時間の上限設定です。
2024年3月31日までは、運転手の時間外労働時間に上限はありませんでしたが、
同年4月1日からは時間外労働時間が年960時間に設定されました。
このように、運送業界ではさまざまな変化が起きているのです。
これらの変化は運転手の労働環境を守るためであり、
運送業界を守るためのものなのです。
私たちの生活は運送業界なしでは成立しません。
もし運送業界がなくなれば、ネットで商品を購入しても自分の手元に届きませんし、
相手に荷物を送ることもできません。
運送業界を担っている運転手の労働環境が悪い状況が続くと、運転手の離職が進み、
運送業界が崩壊してしまうのです。
運転手の離職を食い止めるためには、本記事に貨物自動車運送事業法の改正のように、
法規制で運転手の労働環境を改善したり、
運転手の給料アップを図ることが必要になってきます。
運送業界は必要不可欠な業種であることから、運転手不足の解消を図るために、
今後も法改正が行なわれたり、給料アップが図られるでしょう。
運送業界の今後については、株式会社ジャパン・リリーフの「運送業界の今後はどうなる?市場規模や課題・取り組みも合わせて紹介」にも
記載していますので、合わせて参考になさってください。
まとめ
貨物自動車運送事業法の内容と、改正内容・罰則について、ご理解深まりましたでしょうか。
貨物自動車運送事業法の改正は、運転手をはじめ、
運送業界全体を良好にするために行なわれているものなのです。
もし貨物自動車運送事業法に違反した場合は、
本記事に記載している罰則の対象になることを知っておいてください。
本記事を参考に、貨物自動車運送事業法や運送業界の今後について知っていただき、
あなたも運送業界に入ってみてはいかがでしょうか。