残業を月60時間超過するのは違法?残業代の計算方法や違法になるケースも紹介!
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長時間の残業は、肉体的・精神的に与えるダメージが大きく、
一定時間を超えた残業に関しては、労働者へ割増賃金を支払わなければなりません。
残業が月に60時間超過する残業では、50%以上の割増賃金を支払う必要がありますが
本記事では、残業が月60時間超過している場合の残業代の支払いや違法性について、
詳しく解説します。
月60時間の残業時間超過は違法なのか?
時間外労働の上限が月45時間と定められています。
月60時間を超過する残業が続く場合は、違法な残業である可能性が高いです。
その理由について、以下を参考になさってください。
36協定の締結・届出が必要
労働基準法第32条・第34条では、原則として1日の労働時間は8時間、
1週間の労働時間は40時間と規定されています。
この労働時間のことを「法定労働時間」といい、
これらの時間を超過して労働者を働かせることはできません。
もし法定労働時間を超過して働かせる場合は、使用者と労働者の間で36協定を締結し、
管轄の労働基準監督署に届け出る必要があるのです。
36協定が締結されていない状態や、労働基準監督署に届出がされていない場合は、
残業そのものが違法となります。
残業時間には上限がある
上記のように36協定の締結、労働基準監督署への届出を行なっていたとしても、
月45時間および年360時間を超える残業は、原則として違法となります。
臨時的な特別な事情がある場合は、特別条項付きの36協定を結ぶことで、
月45時間および年360時間を超えての残業が認められることがありますが、
以下の範囲の残業でなければなりません。
・時間外労働時間が720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計が「2か月平均」、「3か月平均」、「4か月平均」、「5か月平均」、「6か月平均」ですべて1か月あたり80時間以内
・月45時間を超える時間外労働は、年6か月が限度
よって特別条項付きの36協定を結んでいたとしても、
月45時間を超える残業が続いている場合は違法になる可能性があるのです。
残業が月60時間を超えると残業代が割増に!
残業が月60時間を超えると、
残業代が50%以上の割増率で計算しなけしなければなりません。
2023年3月31日までは、大企業に対して割増賃金の支払いが義務付けられており、
中小企業は支払い義務が猶予されていました。
しかし2023年4月1日からは中小企業に対しても、
月60時間を超える残業の割増賃金のルールが適用されているのです。
これまでは月60時間を超過して残業しても割増率が25%でしたが、
この割増率が50%に引き上げられましたので、支払われる残業代が実質的に増えます。
残業代の計算については、株式会社ジャパンリリーフの
「ケース別残業と割増率の考え方とは?残業代の計算方法も詳しく紹介!」にも
記載していますので、合わせて参考になさってください。
月60時間残業した場合の計算方法と残業代について
月60時間残業した場合の計算方法と残業代についてみていきましょう。
月60時間残業した場合の計算方法
以下のように、1カ月の起算日からの時間労働時間数を累計して
60時間を超過した時点から、50%以上の率で
計算した割増賃金を支払わなければなりません。
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1
5時間 |
2
5時間 |
3 | 4
2時間 |
5
3時間 |
6
5時間 |
|
7 | 8
2時間 |
9
3時間 |
10
5時間 |
11 | 12
5時間 |
13
5時間 |
14 | 15
3時間 |
16
2時間 |
17 | 18
3時間 |
19
3時間 |
20
3時間 |
21 | 22
3時間 |
23
3時間 |
24
2時間 |
25
1時間 |
26
2時間 |
27
1時間 |
28 | 29
1時間 |
30
1時間 |
31
2時間 |
上記カレンダーで日曜日は休日とします。
平日月曜日から土曜日の勤務において、残業時間を記載しました。
23日(火)までで残業時間が60時間で、24日(水)~27日(土)、
29日(月)~31日(水)の合計10時間が、60時間を超過した残業時間です。
60時間までの残業代は、「通常の労働時間の賃金の時間単価」×1.25で計算します。
60時間を超えた残業代は、「通常の労働時間の賃金の時間単価」×1.5で計算するのです。
具体的な残業代は以下でご紹介します。
月60時間残業した場合の残業代
月60時間残業した場合の残業代の試算は以下のようになります。
月給(基本給) | 250,000円 |
1日の所定労働時間 | 8時間 |
所定休日 | 土、日、祝日
年末年始12月28日~1月4日、夏季休暇3日 |
年間(平成28年)所定労働日数 | 366日−休日131日=235日 |
年間の所定労働時間数 | 1日の所定労働時間8時間×235日=1,880時間 |
1月平均所定労働時間数 | 1,880時間÷12か月≒156.67時間
(小数第三位以下四捨五入) |
通常の労働時間の賃金の時間単価 | 月給250,000円÷156.67時間≒1,596円/時
(小数点以下四捨五入) |
1か月の合計が60時間までの時間外労働の時間単価 | 1596円×1.25=1,995円/時
|
1か月の残業代合計 | 1,995円×60時間=119,700円 |
当月の給料 | 250,000円+119,700円=369,700円 |
月の残業時間が70時間、うち60時間を超過した分の残業は10時間となります。
残業代の合計は、1か月の合計が60時間までの賃金が119,700円、
60時間超過の10時間分の残業代が23,940円で、143,640円です。
残業が違法になるケース3つ
以下のようなケースでは、違法な残業である可能性があります。
残業代が正しく支払われていない
月60時間を超過した残業があった場合は、
大企業・中小企業すべてが50%以上の割増率の割増賃金を支払わなければなりません。
とくに中小企業は2023年4月1日から50%以上の割増率に規定が変更されていますので、
3月31日までの25%以上の割増率の賃金しか支払われていない場合は違法といえます。
固定残業制度が適切に適用されていない
固定残業代とは、毎月の基本給にプラスして、
一定時間分の残業代をあらかじめ支給する制度をいいます。
例えば、毎月20時間分の固定残業代が毎月支払われている場合は、
20時間までの残業をしたときは残業代が支払われません。
ただ残業時間が20時間未満であっても、固定残業代は満額支払われるのです。
残業が20時間を超えた場合は、超えた分の残業代は支払わなければなりません。
固定残業代を支払っているからといって、追加の残業代を一切支払わないのは違法です。
名ばかり管理職になっている
労働基準法第41条第2号には、管理職(管理監督者)は、
労働時間、休憩、休日の規制が適用されません。
管理職とは、経営者と一体的な立場にあたる人のことをいいます。
「課長」「部長」といった肩書で判断できるものではありません。
実態が管理職に当たらない「名ばかり管理職」に対しては、
一般の従業員と同じく、残業代を支払わなければ違法となります。
正しい残業代が支払いされていない場合の対処法
正しい残業代が支払いされていない場合は、弁護士に相談するのが最善です。
労働基準監督署に相談する方法もありますが、労働基準監督署は会社に対して、
未払いの残業代の支払いを命令できません。
まずは弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士への初回相談は、基本的に30分5,000円が相場です。
法テラスでは、弁護士が無料で20分間相談を聞いてくれますので、
費用を抑えたい方は法テラスの利用をおすすめします。
残業時間を減らすための取り組み3つ
残業時間を減らすための取り組みには、以下の4つを参考にしてください。
社員の作業効率を見直す
現状の社員の仕事の進め方がベストなのかを見直してみましょう。
1人の社員の作業効率を見直すのではなく、社員全体の作業効率を見直すことで、
社内の作業効率が向上し、社内全体で残業時間を減らすことができます。
事前申告制を導入する
やむを得ず残業しなければならない状況になったときは、
会社へ残業する旨を申告する制度を導入するのも1つです。
申告制にすることで、時間内に仕事を終わらせる意識を持たせることができますし、
本当に残業して終わらせなければならない仕事なのかを精査することもできます。
ノー残業デーを設定する
ノー残業デーを設定することで、
社内で残業しないという共通認識をもつことができます。
多くの人が残業をしていて帰りにくい日常であっても、
ノー残業デーを設定することで、残業することなく、
気兼ねなく帰ることができるしょう。
まとめ
残業が月60時間超過している場合の残業代の支払いや違法性について、
ご理解深まりましたでしょうか。
残業代は法律で決められたと通りに支給しなければなりません。
残業代の計算方法については記事に記載しておきましたので参考になさってください。
もし残業代が正しく支給されていない場合は、
法テラスや弁護士事務所を利用して相談してみましょう。
本記事を参考に、ご自身の残業代を見直してみてはいかがでしょうか。