ライドシェアとタクシー業界の関係は?本格的な解禁に向けた議論とそれぞれの役割
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「ライドシェアとタクシーって何か関係があるの?」
「ライドシェアとタクシーは今後どうなる?」
このように、ライドシェアがタクシー業界と関係があるのかどうか、今後この2つがどうなっていくのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事ではライドシェアとタクシー業界の関係、タクシー会社が実際に協力する有償旅客運送制度創設についてや、自家用旅客運送管理の事例などについて紹介します。ライドシェアとタクシー業界にどのような関係があるのか、分かるようになるでしょう。
またライドシェアに解禁論がある理由やタクシー不足の問題、ライドシェアのメリットなどについても紹介しています。ライドシェア導入の利点やタクシー業界の問題、それに向けた政府・与党の議論について知ることができます。
ライドシェアとタクシー業界の関係について興味がある場合は、ぜひこちらの記事をチェックしてみてください。
ライドシェアとタクシー業界の関係
近年注目が集まっている「ライドシェア」ですが、これはタクシーとはまったく違うものです。またライドシェアは海外では急速に普及しているものの、日本ではまだまだ一般的ではなく、あまり普及していません。
しかしタクシー業界と関連して、ライドシェアの解禁論が浮上するなど切っても切れない関係にあることは事実です。まずはライドシェアとタクシー業界の関係について、紹介します。
ライドシェアとは車の相乗り
ライドシェアとは、「Ride」が乗るという意味で「Share」が共有を意味することから、車の相乗りを意味する言葉です。現在ではスマートフォンのアプリを使ってドライバーと利用者(相乗り希望者)をつなぎ、有料で人を運ぶサービスがライドシェアと呼ばれています。
車を使用して移動するとガソリン代や高速道路利用料などがかかりますが、これらの費用をライドシェアすることで利用者と折半し、移動コストを節減できます。
白タクは原則禁止
ライドシェアは海外で普及しているものの、日本ではそれほど普及していないと紹介しました。日本でライドシェアの普及が遅れている理由は、日本では自家用車を用いて有償で他人を運送することが、原則「白タク」行為として禁止されているためでしょう。
これは「道路運送法の第七十八条(有償運送)」に記載されているもので、原則として自家用車での有償運送は禁止されています。ちなみに白タクとは、タクシー営業許可のない自家用車で営業している違法タクシーのことを指します。
出典:道路運送法|e-Gov法令検索サイト
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000183
ライドシェアはタクシー不足地域で限定的に導入
なかなか普及の進まないライドシェアですが、道路運送法でも原則禁止となっているだけで全面的に禁止されている訳ではありません。
日本ではタクシーやバス、電車といった公共交通手段がメインですが、バス・タクシー不足地域では「自家用有償旅客運送」は認められている場合があります。
またそのほかに、訪日外国人観光客を対象としたライドシェア特区などでもライドシェアが利用可能になっています。
出典:道路運送法|e-Gov法令検索サイト
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000183
タクシー会社等が協力する自家用有償旅客運送制度の創設
日本では道路運送法により白タク行為が禁止されていることから、ライドシェアの普及が遅れています。しかし2020年11月から道路運送法の改正により、バス・タクシー会社が協力する「事業者協力型自家用有償旅客運送制度」が創設されています。
ここでは、事業者協力型自家用有償旅客運送制度の概要や意義について紹介していきます。この制度によって何が変わったのか、見ていきましょう。
出典:道路運送法|e-Gov法令検索サイト
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000183
出典:自家用有償旅客運送ハンドブック|国土交通省自動車局旅客課
参照:https://www.mlit.go.jp/common/001374819.pdf
事業者協力型自家用有償旅客運送の概要
タクシー業界等の交通事業者が市町村やNPO法人などから委託を受け、または実施主体として参画し、培ったノウハウを活かして運行管理を含む運行業務を担うことです。
これにより市町村やNPO法人などが使用している自家用車の運行管理や、車両整備管理をバス・タクシーの交通事業者へ委託することが可能になります。
出典:自家用有償旅客運送ハンドブック|国土交通省自動車局旅客課
参照:https://www.mlit.go.jp/common/001374819.pdf
事業者協力型自家用有償旅客運送の意義
事業者協力型自家用有償旅客運送制度の導入にあたっては、利用者や運送主体、バスやタクシーの交通事業者それぞれに意義があります。
まずバスやタクシー事業者にとっては、委託費を確保することで収入の向上が期待できます。利用者にとってもバスやタクシー事業者が運行管理・車両整備管理に協力しているため、より安心、安全なサービスを受けることが可能になるでしょう。
市町村やNPO法人といった運送主体にとっては、業務負担を軽減できること、交通事業者の運行ノウハウを活用できるという意義があります。
出典:自家用有償旅客運送ハンドブック|国土交通省自動車局旅客課
参照:https://www.mlit.go.jp/common/001374819.pdf
タクシー業界が自家用旅客運送の運行管理を担っている事例
事業者協力型自家用有償旅客運送制度が創設されたことにともない、実際にタクシー業界が自家用旅客運送の運行管理を担う事例も登場しました。
ここでは制度を実際に活用した事例について紹介します。
紹介する事例は2つです。それぞれ運行参画と運行委託の事例をご紹介します。
出典:自家用有償旅客運送ハンドブック|国土交通省自動車局旅客課
参照:https://www.mlit.go.jp/common/001374819.pdf
兵庫県養父市(運行参画)
兵庫県養父市では自家用有償観光旅客等運送事業、「やぶくる」の取り組みが行われています。やぶくるではタクシー事業者の運行管理者がNPO法人の運行管理を兼務して、タクシーと自家用有償配車を一本化し、ニーズに合わせた役割分担が可能になりました。
タクシー会社がない地域やコミュニティバスの路線がない地域には、自家用有償バス路線経路を設けてそれぞれの地域で完結しています。タクシー事業者は自家用車を使用する市民ドライバーの点呼やアルコールチェック、健康管理などを行い、運送依頼をする形です。
出典:自家用有償観光旅客等運送事業「やぶくる」の取り組みについて|特定非営利活動法人養父市マイカー運送ネットワーク
参照:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/soukou/soukou-magazine/1908-5sougoukoutsu.pdf
沖縄県宮古島市(運行委託)
沖縄県宮古島市では、観光ニーズに対応した自家用有償旅客運送の活用が始まりました。これは宮古島タクシー事業協同組合が運行委託を受け、タクシーが不足しているエリアや時間帯を踏まえて配車する形となっています。
沖縄県の宮古島市には大型クルーズ船が寄港しますが、その際にタクシーが不足し、待ち時間が発生していました。自家用有償旅客運送を活用することで、タクシーの待ち時間の改善につながっています。
出典:自家用有償旅客運送の制度見直しについて|国土交通省自動車局
参照:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001314096.pdf
深刻なタクシー不足とライドシェアの本格的な解禁論
日本ではライドシェアはあまり普及していないと紹介しましたが、最近になってライドシェアの本格的な解禁、導入推進に向けた議論が政府・与党内で高まっています。しかし一方で、ライドシェアの解禁については慎重論も見られます。
ここからは、深刻なタクシー不足の問題とライドシェアの本格的な解禁論はどうなっているのか紹介します。
タクシー業界は運転手不足が課題
ライドシェア解禁に向けた議論が進んでいる背景には、タクシー業界の深刻な運転手不足という課題があります。
全国のタクシー会社で働く運転手の数は約20万人ですが、この数はコロナ禍前から20%程度減少しています。その結果、タクシー不足が深刻化しているのです。
また、タクシー運転手の平均年齢が50代後半と高齢化していることも課題の1つでしょう。
政府与党内でライドシェアの本格的な解禁論が急浮上
深刻なタクシー不足という課題を背景に、ライドシェアの本格的な解禁、導入推進に向けた議論が政府・与党内で急速に高まっているといわれています。
現在は地方でタクシーが不足することにより、通院や買い物などの足をタクシーに頼っている人たちの交通崩壊が起きることが懸念されています。ライドシェアを解禁すれば、新たな移動手段の確保になると見込まれます。
ライドシェア解禁に反対するタクシー業界
ライドシェア解禁に反対しているのは、主にタクシー業界でしょう。タクシー業界はライドシェア解禁に対して、運行の安全確保が難しいといった理由で反対しています。
タクシー業界は安全・安心が担保された輸送サービスの提供を行っていますが、ライドシェアではドライバーの質が担保されていません。また、犯罪に巻き込まれる可能性があるでしょう。
さらに事故に遭った際、ドライバーの保険内容によっては補償を受けられない可能性がある、といった懸念点も存在します。
ライドシェアのメリット
ライドシェアは海外では普及してきているサービスです。これにはライドシェアの利用に多くのメリットがあることが理由でしょう。
たとえばライドシェアのドライバー(提供者)は、自身が保有する車を使って副業ができ、利用者はタクシー等を利用するよりも割安で移動できるといったメリットがあります。
このほかにタクシーやバスといった交通機関がない地方において、タクシーやバスに代わる移動手段になりえるというメリットもあるでしょう。
タクシー業界の役割は変わらない
タクシー業界がライドシェア解禁に反対していますが、タクシー不足は深刻な課題となっています。すでにライドシェアを取り入れている自治体もあるため、今後ほかの自治体でも取り入れられる可能性は高いでしょう。
ただ、日本のタクシー会社にはサービスの質の高さや信頼感・安心感など公共交通としての期待と役割があります。
そのためライドシェアが解禁されたとしても、タクシーの不足を補完する形となり、結果的にタクシー業界の役割は変わらないと予想されています。
出典:【プレスリリース】「ライドシェア新法」の提案を国土交通大臣ほか、関係大臣宛てに提出 | 新経済連盟
参照:https://jane.or.jp/proposal/pressrelease/4400.html
ライドシェアと公共交通としてのタクシー業界はそれぞれの役割がある
ライドシェアは海外で普及しているものの、日本ではまだまだ限定的に活用されているのが現状です。しかし深刻なタクシー不足の影響を受け、政府・与党内ではライドシェアの本格的な解禁に向けた議論が高まっています。
ライドシェアは今後、移動手段の1つとして導入される可能性がありますが、タクシー業界には公共交通としての役割があるため、あくまでもタクシー不足を補完するために導入される可能性が高いでしょう。
出典:【プレスリリース】「ライドシェア新法」の提案を国土交通大臣ほか、関係大臣宛てに提出 | 新経済連盟
参照:https://jane.or.jp/proposal/pressrelease/4400.html