荷卸し作業とは?きつい?事故の発生状況や防ぐための対策・資格についても解説
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「荷卸し作業とは何だろう?」
「荷役作業の意味や読み方、具体的な作業内容や手順は?」
「荷役作業によくある事故と防止するために必要なことは?」
荷卸し作業や荷役作業に興味を持っている人には、このような疑問があるのではないでしょうか。
この記事では荷役作業の基本的な意味や読み方、具体的な作業内容に加えて、荷役作業時に発生しやすい事故と安全対策について解説します。荷役作業に役立つ資格や荷卸しを上手に行うコツも紹介するため、荷役作業とは何かを把握でき、実際の作業に役立つ情報も得られるでしょう。
荷卸し作業について知りたい人だけではなく、荷役作業の全体像や事故の発生状況、安全対策に関心がある人はぜひ読んでみてください。
物流業界の「荷役作業」の意味と読み方は?
ここでは、物流や運送業界で使われる荷役作業という言葉の意味と正しい読み方を解説します。物流業界に初めて触れる人や、荷役作業について知っておきたい人は参考にしてみてください。
荷役の意味
荷役とは物流業界において荷を扱う作業全般を指します。もともとは船荷の上げ下ろしをすることや、それをする人という意味で使われていました。
しかし現在では、陸上での輸送車両や倉庫などへの積み込みも含めて、荷卸し作業とそれに関連する仕事全般の意味で用いられることがほとんどです。
荷役の読み方
荷役は「にやく」と読むのが正しい読み方です。役という漢字は「えき」とも読むため、「にえき」と読んでいた人も多いのではないでしょうか。
漢字本来の意味には違いがありませんが、日本語では「やく」と「えき」という読み方にそれぞれ違う意味を持たせてきました。
「やく」は役人や役割という言葉のように、仕事や割り当てという意味です。それに対し「えき」は使役、苦役のように働かせる、戦争などの意味で使われてもいました。
「荷卸し」「荷下ろし」「荷降ろし」の違いは?
荷物をおろすという意味では「荷卸し」「荷下ろし」「荷降ろし」の3つとも使われており、どれも間違いではありません。ただし、卸すという言葉には問屋が小売業者に商品を売るという意味があります。
また、下ろしは、漢字から連想されるように上から下にという状況で使われる言葉です。同様に、降ろしという言葉には高い場所から低い場所へという意味合いがあり、乗り物から荷を移す際はこの漢字が使われます。
日常的に使う際はそこまで気にする必要はありませんが、厳密に使い分けたい場合は状況に適した言葉を使いましょう。
荷役作業の順番は?
ここでは、物流業界で行われている荷役作業の一般的な工程について詳しく解説します。荷役作業は物流の中心を担っているため、それぞれの工程と連携を理解することで物流業界全体をより把握できるでしょう。
1:荷の積み下ろし
荷の積み下ろしはトラックや貨物列車、船舶、航空機などから荷を下ろす作業のことです。大型の荷はフォークリフトやクレーンなどの車両を用います。
また、海外からの輸入では、コンテナの中にある荷をパレットへ積んでいく作業を行います。特に、コンテナから荷を出す作業のことをデバンニングと呼び、荷卸しとほとんど同じ意味です。
作業自体はコンテナからパレットへ荷を移すというシンプルなものですが、体力が必要な作業です。
2:荷の運搬
積み下ろした荷は建物の敷地やコンテナヤード内を移動させますが、運搬方法は様々です。人力や台車を使用する場合と、重量のある荷を運ぶためにフォークリフトを利用する場合があります。
効率的かつ安全に運搬するために、適切な運搬機器を使い分けることが大切です。
3:荷の積み上げ
荷の積み上げは積付けとも言い、荷を特定の場所やパレットなどに積み上げる作業です。特に、パレットに荷を積み上げることをパレタイズと呼びます。
荷を積み上げる際は、移動時の荷崩れや積み上げ過ぎによる荷の潰れを防ぐ必要があるため、適切な積み方を考慮しなければなりません。
4:荷の保管
積み上げられた荷は、倉庫やコンテナヤード、物流センターで保管されます。入庫時には、荷の種類や数量、キズなどの有無を検品することが多いです。
また、保管作業には出入庫や品質に関するデータの取り扱い、在庫管理などが含まれます。
5:荷のピッキング作業
ピッキング作業では、保管してある分から出荷指示書通りに商品を集めます。通信販売でよく使われるのが積取り方式という作業で、倉庫内から出荷指示書にある商品を1つずつ集めて出荷する方法です。
一方、種まき方式では同種の商品をまとめて集めます。商品の種類が少なく、限られた納品先に大量に出荷する際によく使われる方法です。
6:荷の仕分け作業
仕分け作業とは、荷をその種類、出荷先、積み込む車両ごとに分ける作業です。この作業は人間が行う場合は手仕分け、機械が行う場合は自動仕分けと呼ばれます。
手仕分けは人間の手による精密な作業が可能ですが、時間と労力がかかります。反対に、高速に処理できる自動仕分け機は流せる荷の基準が決まっているため万能ではありません。取り扱う荷の種類によって、手仕分けと自動仕分けを使い分ける必要があります。
7:荷の出荷
ピッキングや仕分け作業を経て、実際に荷を出荷していく作業です。同時に、在庫管理データと照らし合わせる検品作業をします。多くの場合、崩れやキズなどで品質が落ちることのないよう適切に梱包するでしょう。
このようにして出荷準備が完了すると、目的地別の輸送車両に積み込まれ出荷されます。
荷役作業時の事故発生の内訳と内容
荷役作業中に起こる事故には、特有の状況や原因があることがわかっています。事故防止のために、どのような状況で事故が起こりやすいのかを知っておくことが大切です。
ここからは、荷役作業時の事故発生の内訳と内容を紹介します。
荷役作業の事故の割合
陸上貨物運送事業における事故発生状況では、墜落・転落が死傷災害全体のうち約3割を占めています。事故の多くは荷役作業時に起こり、中でもトラックやフォークリフトなどからの墜落・転落による死傷者数が多い状況です。
このようにトラックやフォークリフトにおける荷の積み下ろし作業中の墜落・転落事故が典型的な事例ですが、状況や作業内容によって多様な事例があります。
出典:荷役作業時における墜落・転落災害防止のための安全マニュアル|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/0909-1a.pdf
事故発生例1:トラックの荷台からの転落
トラックの荷台から転落する事故では様々な状況が原因となっています。よく見られる事例は、荷台に積まれた不安定な荷の上や、あおり、リアバンパー、テールゲートリフターからの転落です。このような場所に乗ったり足をかけたりすると、バランスを崩しやすくなります。
その他、あおりのキャッチがかかっていなかったためにあおりが開いてしまったこと、使用していた荷締め機から手が滑った反動、シートを無理に引っ張った反動などがよくある原因です。
出典:陸上貨物運送事業における重大な労働災害を防ぐためには|厚生労働省
参照:https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/content/contents/koga_roudoujikan_s08_r0408.pdf
出典:荷役作業時における墜落・転落災害防止のための安全マニュアル|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/0909-1a.pdf
事故発生例2:雨天時に足が滑り転落
雨が降り出した際にシートをかけ直すためにトラックのあおりに乗り、足を滑らせ転落した事例があります。あおりに乗っての作業は雨天時以外でも危険であるため、地上から作業するなどの工夫が必要です。
出典:荷役作業時における墜落防止のための安全設備マニュアル|厚生労働省
参照:http://rikusai.or.jp/wp-content/uploads/pdfs/niyaku-tsuirakuboushi-manual.pdf
事故発生例3:他の作業員が原因の転落
複数名での積み込み作業中などにも、事故が発生することがあります。
トラックの荷台から転落した事例では、フォークリフト運転者が位置決めの合図しているトラック運転者に気づかずに荷を移動したため事故が発生しました。視界が広く取れる場所を確保するなどの工夫が必要です。
出典:荷役作業時における墜落防止のための安全設備マニュアル|厚生労働省
参照:http://rikusai.or.jp/wp-content/uploads/pdfs/niyaku-tsuirakuboushi-manual.pdf
事故発生例4:トラックのハンドブレーキをかけ忘れて車両事故
駐車していた無人トラックが動き出してしまった際に止めようとした結果、事故が発生することがあります。ハンドブレーキが適切に使用されていなかったり、傾斜のある積雪路面に停車していたりなどが原因の事例がありました。
事故を防ぐためには逸走防止措置として、パーキングブレーキ、エンジン停止、ギアロック、輪止めの4セットを確実に行いましょう。
また、トラックが動き出してしまった場合でも止めるために車に近づくと挟まれる危険があるため、近づかずに周囲へ注意を呼びかけるなどの行動をとります。
出典:陸上貨物運送事業における重大な労働災害を防ぐためには|厚生労働省
参照:https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/content/contents/koga_roudoujikan_s08_r0408.pdf
荷役作業時に有効な事故防止対策
ここでは、荷役作業時に事故を防ぐための効果的な対策について解説します。
荷役作業では事故を防ぐための対策が非常に重要となるため、具体的な対策やその実施方法を知っておくと役立つでしょう。
事故防止対策1:マニュアル作成と教育
事故防止のためには、安全マニュアルを作成しマニュアルに基づいて指導・教育することが重要です。作業者がそれぞれ安全に対する意識を高めていくことで、事故防止につながります。
危険な場所や作業についての知識、事故を予防するための具体的な行動などを共有し訓練を実施することで、すべての作業者が安全な行動を取れるようにしておきましょう。
事故防止対策2:トラックからの転落防止措置
転落事故防止対策として重要なのが保護帽を着用することです。荷役作業では、作業高によらず転落した際の打ちどころによって深刻な事故となり得ます。保護帽は墜落事保護用のものを適切に使用しましょう。
また、荷台の上で作業する場合に有効なのは、簡易作業床や移動式プラットフォームなどをあおりに取り付けて転落を防ぐことです。
屋外作業場では、建屋天井部分からロープを下げて作業者が着用する安全帯に取り付けるという対策が可能です。この設備を使用することで、万が一墜落した時でもストッパーが働くため作業者の体が固定されます。
事故防止対策3:作業ごとの点検項目を確認する
荷主や陸上貨物運送事業者、荷役作業従事者を対象とした、作業ごとの安全点検項目の確認が重要です。
具体的には安全衛生活動の推進、作業計画・作業手順書の作成と遵守、危険予知活動やリスクアセスメントの実施などがあります。
他にも、トラックでの荷役作業中に起こる事故防止に関する項目や、フォークリフトなどの運搬機器に関する項目も適切に確認しましょう。
このような作業ごとの点検項目を定期的に確認することで、事前に危険要因を発見し事故の発生を防ぐことが大切です。
荷役作業に持っておくと便利な資格は何?
ここでは、荷役作業に従事する場合に持っておくと便利な資格を紹介します。
荷役作業に関する特定の資格を取得することは、作業の効率性を上げるだけでなく安全対策の面からも大切です。また、取得することで専門的な知識と技術を持っていることを証明できます。
フォークリフト免許
フォークリフトは荷を運搬したり積み込んだりする車両で、取り扱う荷によっていくつかの種類があります。
受験資格は18歳以上であることのみで、フォークリフト運転特別教育を受講すれば敷地内での運転が可能となります。ただし最大荷重1トン以上のフォークリフトの場合は、運転技能講習で学科教育と技能教育を受け、修了資格試験に合格しなければなりません。
試験に合格すると運転技能講習修了証(免許)を取得できます。
出典:フォークリフトの運転の業務に係る特別教育|神奈川労務安全衛生協会
参照:https://www.roaneikyo.or.jp/reserve/sp/detail.html?tid=59
出典:フォークリフトの安全な作業のために|豊田労働基準監督署
参照:https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/var/rev0/0119/5752/2018112163729.pdf
船内荷役作業主任者
船舶へ荷を積む、下ろす、移動させる作業においては、作業主任者の選任が義務付けられています。
受講資格は揚貨装置、クレーン、移動式クレーン、デリック運転士免許取得後、4年以上船内荷役作業に従事している者です。資格取得のための講習内容は作業の指揮に必要な知識、船舶設備などの取り扱いに関する知識、荷役の方法に関する知識などです。
出典:船内荷役作業主任者技能講習|港湾労働安定協会 港湾技能研修センター神戸
参照:https://anteikyoukai.or.jp/kensyukobe/course/03-2/
はい作業主任者
安全対策のため作業者へ指揮する、はい作業主任者の選任が義務付けられています。
はいとは、倉庫や土場に積み重ねられた荷の集団のことです。はい作業には、袋や箱などの荷を積み上げる「はい付け」取り下ろす「はいくずし」があり、墜落・転落、飛来・落下物により危険性の高い作業となっています。
はい作業主任者技能講習を受講できるのは、2メートル以上の「はい付け」または「はいくずし」作業に3年以上従事した者です。
出典:労働安全衛生規則 第二編 第七章 荷役作業などにおける危険の防止
(第四百十七条-第四百七十六条)|中央労働災害防止協会安全衛生情報センター
参照:https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-2h7-0.htm
出典:はい作業主任者技能講習のご案内|公益社団法人東京労働基準協会連合会
参照:https://www.toukiren.or.jp/kousyu_10.html
荷卸し作業を上手に行う方法
荷卸し作業はコツを知っておくことで体に負担をかけずに済みます。基本的に荷を持ち上げたり移動させたりする時は、腕の力のみを使うのではなく背筋や背中を意識して体全体を使うようにしてください。荷の重さを体全体で受け、腕は支えるだけという感覚で行いましょう。
また、荷を持ち上げる際は一度腰を落としてから足の力を使って持ち上げます。力を入れた状態を維持していると疲弊するため、緩急を意識しましょう。荷を持つ際は底の角を持つことで、横を持つよりも安全で楽に持てます。
力任せにたくさんの荷を一度に運ぼうとすると、怪我につながったり疲労したりして逆効果になります。荷卸しは一般的にスピードが求められる作業ですが、無理をしないことも大切です。作業前は怪我予防のために、ストレッチなどの準備運動をしましょう。
荷卸し作業とは何か確認して安全を確保しよう
この記事では物流業界の荷役作業や荷卸し、事故の発生状況、安全対策などについて解説しました。
荷役作業の内容は様々ですが、人力や車両などを使った荷の取り扱いが主な作業です。その間で発生しやすい事故には、トラックやフォークリフトからの墜落・転落があり、徹底した安全対策が求められます。
荷役作業の事故発生を防いでいくために、作業者1人1人が安全対策に必要な行動を理解し、積極的に実施していくことが大切です。この記事を参考に荷卸し作業とは何かを確認し、安全に作業していきましょう。