トラックに搭載されているデフロックとは?使用すべき状況についても紹介
- トラックドライバー
「トラックに搭載されているデフロックって何?」
「デフロックの仕組みや特徴は?」
「デフロックを起動させるメリットとデメリットは?」
トラックにも搭載されている「デフロック」について、良く知らないというトラックドライバーもいるでしょう。
オフロード車にはほぼ採用されているというデフロックは、その有用性を理解してから使用する必要があります。
この記事では、デフロックとは何か、その仕組みや特徴、デフロックを起動させる状況やその注意点などを紹介します。この記事を読めば、デフロックに関する理解が深まり、デフロックを効果的に使用できるでしょう。
この記事を参考にして、デファレンシャルギアやデフロックについて理解して、より安全で効率的な走行につなげましょう。
デフロックとは
「デフロック」は泥道や雪道など悪路でタイヤの空転を防ぎ、はまり込んだタイヤの脱出を補助する働きがあります。そのため、デフロックの機能は不安定な道を走る軽トラックやオフロード車にとって不可欠です。
一般的な車はコーナーなどでタイヤの回転数が左右で異なる際に、その差を埋めるような差動装置が働きます。その標準的な差動装置を「デフ」または「オープン・デフ」と呼びます。
しかし、デフには、はまり込んだタイヤに駆動する力が集中し、他のタイヤが動かなくなって、駆動力ロスを起こすデメリットがあります。
しかし、デフロックを作動させることで、そのようなオープン・デフのデメリットを解決することが可能です。
そもそもデフとは?
「デフ」の正式名称は「デファレンシャルギア」です。デフは、エンジンの動力を左右のタイヤに伝達し、駆動力を発生させて左右の回転差を調整する差動装置です。
このデフの差動機能によって、タイヤの回転数に差が生じるはずのコーナーでも、車は問題なく曲がることができます。
デフロックとは「デフ」を「ロック」する装置で、デフを固定することによって、左右両方のタイヤに均等に駆動力を伝えられる機能です。
そのようなデフロックを起動させることで、1つのタイヤが空転状態となった場合でも、それ以外のタイヤに均等に駆動力が配分されるため、他のタイヤを回転させ続けられる作用があります。
デフロックの仕組みとその特徴
デフロックは、負荷が小さいタイヤに駆動力が集中することで生じるスタックからの脱出を助けてくれます。
スタックとは、雪やぬかるみにタイヤがはまり、タイヤがうまく路面とかみ合わずに進めなくなる現象です。
デフロックの仕組みは1種類ではなく、それぞれ特徴が異なります。
方式は3種類ある
デファレンシャルギアを固定する、デフロックの方式は大きく3つに分けられます。トラックには、一般的にセレクタブルデフロック方式が採用されています。
デフロックの3つの仕組みとその特徴について見ていきましょう。
オートデフロック
「オートデフロック」は、通常はロック状態で、必要に応じて自動的にデファレンシャルギアの解除を行うデフロックです。
直進中は常時固定されるため、常時エンジンの動力が均等にタイヤに伝達され、コーナリング時など各タイヤの回転数に差が生じると、ロックが解除されます。
自動的にロックが作動し、ドライバーの操作が必要ないというメリットがあります。
スプールデフ
「スプールデフ」は、物理的にデフロックの状態にして左右の駆動輪を直結にする方法です。この方法はデフロックを実現するために、オープン・デフ内のスパイダーギアを取り除いたり、溶接で固定したりします。
スプールデフは、「スプール・アクスル」や「ソリッド・デフ」、「溶接デフロック」と呼ばれることもあります。
セレクタブルデフロック
「セレクタブルデフロック」は、通常の走行ではオープン・デフの状態で、必要に応じてドライバーが固定・解除を任意に選択できます。
多くのトラックで採用されているセレクタブルデフロックのメリットは、必要に応じてデフロックの切り替えができるため操縦しやすいことでしょう。
一方、デメリットは構造が複雑で部品数が増える、車種によってはデフロック作動のために停車させる必要があるなどです。
走行安定性の向上
一般的な車は、抵抗の少ないタイヤに多くの回転を与えるデファレンシャルギアの効果により、スタックすると1つのタイヤが空転し、脱出しにくくなります。また、悪路での走行も摩擦の少ないタイヤのみに駆動力が集まり、走行性が悪くなります。
しかし、デフロックを起動すると、はまり込んだタイヤ以外のタイヤにも均等に駆動力が働き、スタックからの脱出に効果を発揮します。と同時に、オープン・デフの車では走行しにくい摩擦が不均一など路面でも、走行安定性が向上します。
デフロックが搭載されている車とは?
前述したとおり、一般的な自動車はオープン・デフの差動装置が標準で備わっています。それによって、車が円滑にコーナーを曲がることが可能です。一方、デフロックが標準装備されている車種もあります。
ここからは、デフロックが搭載されている車を紹介します。
軽トラック
軽トラックの多くはデフロックを装備しています。工事現場で部品を運搬したり、農作業に使用されたりする軽トラックは、舗装されていない道路を走行する場面が多くあります。
そのようなスタックしやすい場合に直面しても、デフロックの機能により脱出をアシストしてくれるでしょう。
また、軽トラックだけでなく大型トラックでも、悪路におけるスリップ防止の目的でデフロックの装備が一般的になっています。
オフロード車
クロスカントリーに使用されるオフロード車には、デフロックが標準装備されています。オフロード車は舗装されていない悪路を走ることを前提に製造されており、ぬかるみにはまってしまうような状況でも対応できることが強みの車です。
山道や林道、雪道、沼地など、アウトドアを楽しむ人はデフロック機能に助けてもらうケースもあるでしょう。
トラックのデフロックを起動させるべき状況とは
デフロックは内輪差によってタイヤの回転差が生じ、特にコーナーでの旋回性が落ちるという側面もあります。また、タイヤの摩耗を早めたり、ハンドルが重くなったりするような現象も起きます。
そのため、デフロックは必要に応じて起動・解除させる必要があるでしょう。デフロックはトラックがスタックに陥りそうな、ぬかるんだ道や凍結路面などで起動させると高い効果が得られます。
トラックがスタックしやすい路面状況
どんな道でも走行する必要があるトラックは、雪道やぬかるんだ未舗装の道を走らざるを得ないことも多く、スタックしやすいでしょう。さらに、トラックはホイールベースが長いため、段差や斜面で車軸が浮くことによってスタックすることもあります。
その場合は、トラックが悪路・凍結路面や、低速走行で段差・斜面にさしかかる前に、デフロックを起動させておくとスタックを防ぐことができるでしょう。
トラックのデフトラブルで起こりうる不具合
トラックのデフロックにおけるトラブルの代表的な症状は、走行中やデフロック起動中の異音・振動です。また、デフロックが故障すると駆動力のロスを抑制できません。
一方、デフ本体が故障するとコーナーで旋回しにくくなるだけでなく、トラックが走行不能になる可能性もあります。
デフロックの不具合の原因としては、デフに充填されているデフオイルの不足や劣化、漏れにあります。また、使用期間が長いと、デフを構成するベアリングの磨耗など劣化が進むため、部品交換などの修理が必要です。
デフロックなどでデフトラブルを起こさないためには
デフロックは、大きな負荷がかかるデファレンシャルギアをロックさせる機能であるため、慎重に起動・解除をする必要があります。停車せずにデフロックを操作すると故障に繋がるため、起動および解除は必ず完全に停車した状態で行いましょう。
また、定期点検の時期はトラックの走行距離や使用状況によって異なりますが、デフロック周辺からの聞きなれない音や振動に気付いたら早めに点検することが重要です。
経年劣化によるトラブルは乗り換えを検討すべき
デフケースの組み替えやベアリングの劣化など、経年劣化によるデファレンシャルギア周辺のトラブルは、修理代が数万円から10万円以上かかる場合があります。
また、老朽化は1ヶ所だけで進行するわけではなく、デフのパーツが経年劣化しているトラックは、さまざまな箇所で故障が頻発する可能性が高くなります。
そのため経年劣化によるトラブルを抱えたトラックは、修理するよりもむしろ乗り換えた方が安心です。
なお、コストや納車までの時間的ロスが原因でトラックの乗り換えを躊躇している場合は、中古トラックへ乗り換えることでそれらの問題を解決できるでしょう。
トラックに搭載されているデフロックについて知っておこう
デファレンシャルギアの効果はコーナーで旋回しやすくなる反面、駆動力のロスも発生します。そのため、スタックが予想されるような場所や状況のために、デフロック機能を備えておくことが重要です。
トラックに搭載されているデフロックの仕組みや目的を理解し、使い方に注意して定期的な点検を行うなど、デフトラブルを起こさないよう注意しましょう。