経理の仕事に簿記の知識は必要?おすすめの資格や勉強方法も紹介
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「経理の仕事をしたい。その場合って簿記の知識は必要なの?」
「経理の仕事に就くためにおすすめの資格はある?」
など、経理の仕事に就きたくても簿記の知識がない場合、本当にそのままで大丈夫なのか疑問や不安を持つ人も多いのではないでしょうか。
本記事では、簿記について解説するとともに、経理の仕事に簿記の知識が必要だと言われている理由や、簿記以外の経理関係でおすすめの資格について紹介しています。
また、資格を取得するための勉強方法についても紹介しているため、この記事を読むことで経理における簿記の重要性と、経理に必要な簿記の知識が分かるでしょう。
さらに、おすすめの資格や資格を得るための勉強方法にも触れているため、経理の仕事に就くために有利な資格が判断できるようになります。
経理の仕事をしたいと考えていても簿記の知識がない、経理の仕事に就くためにおすすめの資格を知りたいという方は、ぜひ本記事をご一読ください。
そもそも簿記ってどのような意味?
「簿記(ぼき)」とは、企業における経営活動を日々帳簿に記録し、計算・整理することによって、企業の経営成績や財務状態を分かりやすくすることです。
たとえば、消耗品を購入した日に、日付と共に消耗品費や雑費にかかった費用を仕分け、何にいくら支払ったのか帳簿に記入するなど、日々のお金の動きを記録・整理しておくことで、財務諸表を作成した際にも現在の企業の状態が一目で分かるようになります。
企業の大小にかかわらず、簿記は必要であることを理解しておきましょう。
会計との違い
「会計」とは、企業を経営する上で発生したお金や物の取引にまつわる財務状況を利害関係者に報告することです。株式会社の場合は、経営者や株式保有者である株主に会計を報告します。
会計を報告するためには、日々の金銭的な取引を記録する簿記も必要になりますが、簿記と会計は内容的に別物です。
経理との違い
「経理」とは、簿記を使って企業の金銭的な流れを記録したり、管理したりすることです。
経理の仕事では簿記を使う必要がありますが、簿記には金銭的な流れを把握したり管理したりすることは含まれてはいないため、前述の会計同様、簿記と経理もイコールではありません。
また、経理を元に予算を管理したり資金運用したりすることを「財務」と言いますが、こちらも簿記とは異なるものです。
経理の仕事に簿記の知識が必要だと言われる理由
そもそも、経理の仕事は簿記をすることで金銭的な流れを記録し、管理することです。そのため、経理の仕事には簿記の知識を身に付けていることが必須です。簿記の知識がなければ、記録や管理が上手くできない可能性があるでしょう。
また、上記の他にも経理の仕事に就くために簿記の知識が必要と言われる理由があります。以下で詳しく見ていきましょう。
就職や転職に有利に働く可能性があるため
経理の仕事では簿記を使う業務が多いため、自身に簿記の知識があることをアピールできれば、就職や転職時の強みになるでしょう。
経理に関する仕事には、入出金の伝票整理や決算処理、税務申告や予算管理といった仕事があります。中でも、伝票整理や決算処理、税務申告をする際に簿記が必要となります。
そのため、簿記の知識がなければ、予算管理の内訳がどうなっているのかを把握するのは難しいでしょう。
英語など他のスキルと組み合わせることでステップアップを目指せるため
簿記の知識は、組み合わせ次第でキャリアアップやステップアップに役立つことがあります。たとえば、英語のスキルと簿記の知識があれば、「英文経理」の仕事に就ける可能性が出てきます。
もちろん経理の専門用語を英語で覚える必要はありますが、元々英語のスキルがある人にとっては、それほど難しくないでしょう。
また、英語だけでなく簿記の知識があることにより、国内の英文経理の仕事に就けたり、会計事務所などの会計ファームで働けたり、さらには外資系企業で経理として働けるようになったりなど、様々なステップアップが目指せます。
経理担当業務の基礎知識が身につくため
経理担当業務で直接使うことがなくても、ほとんどのケースで簿記の知識必要とされます。そのため、簿記を学ぶことで経理担当業務の基礎知識が身に付くと言えるでしょう。
経理未経験で、どのような仕事をしているのか具体的にイメージすることが難しいという場合でも、簿記の知識を身に付けることで、経理がどのような業務をしているのか、ある程度理解できるようになります。
経理に関する資格で代表的な日商簿記検定の基本情報
経理に関する資格はいくつかありますが、ここでは代表的な日商簿記検定についての基本情報を紹介しましょう。
経理への転職や転職を目指しているのであれば、日商簿記検定を取得することで簿記の知識があることをアピールできます。経理を目指して日商簿記検定を受ける人が多いのは、そのメリットのためと言えるでしょう。
ただし、日商簿記検定には1級~3級まであります。3級は簿記への入門としての位置のため合格率も高くなっていますが、経理の仕事を志望するのであれば、2級や1級を目指すことをおすすめします。
以下で、日商簿記検定試験の詳しい内容について紹介するため、ぜひ参考にしてください。
日商簿記3級の試験概要
日商簿記3級の試験内容は、主に基本的な商業簿記の知識についてです。具体的には、商業簿記として企業内外の取引を記録したり計算したりする内容が出題されます。試験時間は60分で、7割以上の正解が合格基準です。
なお、この日商簿記3級は大学の推薦入学に有利になるとされているものの、経理として働くには不足していると言われています。
それでも合格率が約40%~50%と合格しやすいため、挑戦しやすいと言えるでしょう。
出典:簿記 3級|日本商工会議所
参照:https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class3/exam
日商簿記2級の試験概要
日商簿記2級は、より高度な商業簿記や工業簿記が出題されるため、経理を目指す上で必要な資格と言われています。
日商簿記2級からは、商業簿記だけでなく工業簿記も加わるのが特徴です。試験時間は90分、合格基準は日商簿記3級と同じく7割以上の正解です。
日商簿記2級に合格するには、商業簿記に加えて工業簿記(原価計算を含む)のスキル、財務諸表を見て経営状態を把握できるスキルが必要となります。
合格率は約10%~20%と、かなり低めと言えるでしょう。
出典:簿記 3級|日本商工会議所
参照:https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class2
日商簿記1級の試験概要
日商簿記1級には、商業簿記だけでなく会計学・工業簿記・原価計算などが出題されます。そのため、1級を取得できれば経理業務のエキスパートであることをアピールできるでしょう。中には、日商簿記1級保持者に資格手当がつく企業もあります。
試験科目は上記の4科目、試験時間は2つの試験で合わせて180分かかります。試験の難易度が高く、合格率も約10%と低くなっていますが、日商簿記1級に合格すると税理士試験の受験資格を得られます。
メリットの大きい試験ですが、難易度はかなり高めでしょう。
出典:簿記 1級|日本商工会議所
参照:https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/class1
日商簿記検定以外でおすすめの経理に関する資格
就職にあたって経理を志望するのであれば、経理に関する資格を得ておくことで有利になる場合があります。企業によっては、保有している資格によって資格手当がついたり、昇進に有利になったりする可能性もあるでしょう。
ここからは、前述の日商簿記検定以外で経理に役立つ資格を紹介します。経理への就職や転職、キャリアアップを目指している方は、2級以上の日商簿記の他、以下の資格取得を目指してみましょう。
電子会計実務検定試験
昔は帳簿を使って簿記をしていましたが、デジタル化が進んだ現在では、会計ソフトを使ってパソコンで簿記を行っている企業がほとんどでしょう。そこで登場したのが、「電子会計実務検定試験」です。
電子会計実務検定試験では、日商簿記検定の知識とともに会計ソフトに関する知識が必要になります。
電子会計実務検定試験は3級から1級までで、3級では会計データの入力やデータのリストアップ、電子帳簿書類の見方などが出題されます。
1級になると、会計ソフトの導入から運用、電子帳簿の保存やwebへの公開、電子申告や納税システムなども出題されるため、難易度も上がるでしょう。
出典:電子会計実務|日本商工会議所
参照:https://www.kentei.ne.jp/accounting
ビジネス会計検定試験
「ビジネス会計検定試験」とは、財務諸表を適切に分析し、企業の経営状況を理解するための力量が問われる試験です。簿記の知識は必要ありませんが、投資や取引先への評価や社会情勢の知識などから、財務諸表を分析する会計の知識が求められます。
ビジネス会計検定試験は1級から3級まであり、3級では貸借対照表や損益計算書などの知識を、2級では3級に加えた分析指標を学んでいく必要があり、1級になるとディスクロージャーや財務諸表分析、企業分析についても出題範囲となります。
2022年の合格率は3級63.5%、2級54.2%、1級10.8%でした。
出典:試験結果・受験者データ|大阪商工会議所
参照:https://www.b-accounting.jp/data/
経理事務パスポート検定
「経理事務パスポート検定」は、実際の経理で行われている業務に関する知識を身に付けられる検定試験です。1級から3級までありますが、人材派遣や紹介でも使われていて、3段階の実務レベルに対応しているということが特徴でしょう。
PASS3級では、事務スタッフとして必要になる知識や日々の経費処理業務などの知識が学習できます。
PASS2級では経理の手続きや外貨取引の処理などに対象が広がり、さらにPASS1級では、日々の売買取引の手続き方法や月次決算に関する知識、連結決算についても学ぶことになります。
出典:PASS動画インデックス |一般社団法人日本CFO協会
参照:https://www.cfo.jp/pass_mov/
経理・財務スキル検定(FASS検定)
「経理・財務スキル検定(FASS検定) 」とは、経理分野や財務分野の実務知識、スキルの習得度を測るための検定です。経理だけでなく財務知識も必要になり、A~Eの5段階評価で自分のスキルや知識がどの程度なのか分かる仕組みとなっています。
経理や財務に関する資産や決算、税務や資金など4つの分野から出題されますが、合格・不合格はなく、結果によってA~Eの評価になるという点で他の資格とは異なっています。
出典:検定の概要:FASS検定|一般社団法人日本CFO協会
参照:https://www.cfo.jp/fass/fass_exam/index.html
FP技能検定
「FP技能検定(ファイナンシャル・プランニング技能検定)」とは、資産運用のアドバイザーとしてのスキルを認定する検定です。この検定には、合格した等級ごとに国家資格の「ファイナンシャル・プランニング技能士」になれるという特徴があります。
FP技能検定は、「日本FP協会」と「一般社団法人 金融財政事情研究会」の2つが指定試験機関となっており、それぞれの試験機関で等級ごとに実技科目が異なっていることに注意しましょう。
出典:FP技能検定|日本FP協会
参照:https://www.jafp.or.jp/exam/
消費税法能力検定
「消費税法能力検定 」とは、会計処理における消費税の取り扱い方をはじめ、税務署へ申告する書類作成のための税務処理の知識、消費税の計算方法などに関する知識やスキルを測るための検定です。
消費税法能力検定は1級~3級まであり、等級に合わせて仕訳問題や計算問題等が出題されます。
企業活動によって発生する消費税は税務署へ申告する必要がありますが、経理には税務関係の仕事もあるため、消費税法能力検定があると有利になるでしょう。
出典:消費税法|e-Gov法令検索サイト
参照:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=363AC0000000108
経理に関する資格を取得するための勉強方法
経理に関する資格には、未経験者でも簡単に受けられる合格率の高いものから、企業に評価される難易度の高い資格まで様々なものがあります。難易度の高い資格の試験勉強は、特に大変なものでしょう。
ここからは、経理に関する資格取得のためのおすすめの勉強方法を紹介します。資格取得の勉強がはかどらない場合は、こちらを参考にしてみましょう。
スクールに通う
1人だけで資格取得に向けて勉強していてもはかどらない場合、スクールに通うことも検討してみましょう。
スクールではカリキュラムが用意されているため、資格取得に向けて効率が良い勉強ができます。他にも、分からないことがあったら直接質問できたり、周囲に同じ目的の人がいることで良い影響を受けられたりするというメリットがあります。
1人では勉強が大変で長続きしなくても、同じ目的を持つ人たちと一緒に勉強することで仲良くなって励まし合ったり、一緒に合格を目指すことでモチベーションを維持しやすくなったりするでしょう。
テキストや参考書を使って学習する
1人で勉強した方がはかどるという人は、テキストや参考書を購入して学習しましょう。資格取得のための勉強には、参考書やテキストを何度も読み返して理解を深めていくのがおすすめです。
未経験で資格取得を目指す場合、参考書やテキストに見慣れない単語が出て来ることも多いでしょう。1度読んだだけでは理解しきれないため、何度も読んで何が書かれているのかしっかり理解することが大切です。過去問や問題集を繰り返し解いて勉強しましょう。
未経験者が経理の仕事に挑戦する際に簿記の資格は必須?
未経験者が経理の仕事に挑戦する際、簿記の資格が必須ということはありません。しかし、資格を持っている方がより就職・転職しやすくなる場合もあります。
経理という仕事は、事務職の中でも専門性が高い仕事とされています。そして、経理の仕事をする上で、簿記は基本的な知識です。
即戦力を期待している企業を志望するのであれば、資格を持っている方が有利に働くでしょう。
経理と簿記の関係やおすすめの資格について知っておこう
前述のように、経理の仕事に就く場合、簿記の知識や資格が必須というわけではありません。しかし、何らかの資格を持っている方が就職・転職しやすくなるのは事実でしょう。
経理の仕事には簿記の知識が必要になりますが、経理で有利になる資格は簿記だけではありません。この記事で紹介したおすすめの資格を参考に、就職・転職を有利に進めたり、ステップアップを目指したりできる資格を取得してみましょう。
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